私のネオン屋稼業奮戦記

 Vol.71
おかげさまで創業60年 これからもネオンの灯を消したくない想い
     北海道支部 (株)石丸電気 小蕎勝則

小蕎勝則さん わが社は、今年で創業60年を迎えます。昭和22年7月22日、旭川市4条通り8丁目平和通りにおいて、創業者である石丸利光が、電気器具販売店を開店したのがわが社の創業であります。
 当時先代は、現金を持って、大阪、東京方面に列車で仕入れに行ったようです。切符を買うのも大変な頃だったようですが、2〜3年後にはメーカー生産も増え、旭川にいても品物が入ってくるようになったようです。
 昭和25年には、販売した照明器具の取り付けをするのに必要な為、北海道電力の電気工事許可を取って電気工事組合に加入して、電気工事会社に変わっていきました。
 私が生まれる前年の、昭和28年、4条通り8丁目平和通りにその頃としては画期的なネオンアーチが2基設置されることとなり、その仕事を手がけたのが、わが社のネオン工事の始まりでした。「千歳鶴」と「男山」の酒メーカーのネオンだったようです。その当時、もちろんネオン工事ができる社員がいなく、元請の方々に教えてもらいながら工事を進め完成させたようです。その後、ロータリーの「日立」のネオン「東芝」、「ナショナル」と大型ネオンを手がけ、旭川のネオン工事の草分け的な存在となってまいりました。全社員が、ネオン工事の技術を習得し、資格を取得することがわが社の伝統となったようです。
 私はというと、昭和52年に東京の大学を卒業したときに、親戚の勧めでわが社を紹介され、就職難ということもあり入社することを決めました。といいながら、電気の「で」の字も知らず、資格も何も持っていなかったので、1年間、当時の道立職業訓練校(現在の高等技術専門学院)に通い電気工事士、高圧電気工事技術者の資格を取得して、昭和53年にわが社に入社いたしました。
 私は、職人というよりは、現場代理人、設計見積、営業が主な仕事でしたが、ネオン工事は、全社員で施工するのが当たり前で、私もいろいろなネオンの現場で仕事をしました。
 当時は、旭川駅前の屋上広告塔のネオンが盛んでしたし、デパートの新築などで、常に毎年大型ネオンの工事があったように思います。また時期的にも、12月のクリスマスまでに点灯させる現場が多く、寒くしばれる中おそくまで現場で作業をしたものでした。冬は丸太足場が凍って滑りやすく、足が滑り落ちそうになったこともありましたが、下に物を落とさないように細心の注意を図りながら気を緩められない毎日でした。1日中丸太足場の上にいると微妙に揺れるので、足場から降りてもまだ揺れている感じがしていたのが今でも思い出されます。それでも、ネオンの着管、細管送りが終わり、初めて灯を入れる(点灯する)瞬間の緊張感と、見事に点灯したときの感動は今でも最高な瞬間であり、やめられないと感じる思いであります。
 その後、ネオントランスや、ネオン部材がかなり改良され、作業もずいぶんと効率的に早くできるようになってきましたが、最近は、大型ネオン工事もめっきり少なくなり、寂しい限りです。
 昭和61年に先代社長が亡くなり、奥さんが2代目の社長となりました。私は、入社当時から、この奥さんに経理、経営的なものを教えていただいておりましたので、血のつながりはありませんが、息子のように思っていただきました。その奥さんも、早くから人工透析を余儀なくされて健康の不安もあり、平成4年に私は代表取締役専務として2人3脚で経営に参加いたしました。
 平成7年からは、私が、3代目の社長となりました。その奥さんも、平成12年に他界いたしまして、現在に至っておりますが、寂しい限りです。
 わが社は、平成7年より、旭川市のイルミネーション事業にかかわるようになりまして、現在まで続いております。最初は、市役所広場の松の木に試験的に取り付けをし、その後少しずつナナカマドイルミネーションとして広がっていきました。今ではすっかり旭川の風物詩となっております。
 このような、記録にも、記憶にも残る仕事に携わることができるのも、今まで築き上げてくれた、先代から続く先輩方のおかげであると感謝しております。
 イルミネーションも最近は、LEDが主流になってきており、時代の流れを感じております。今、ネオンに代わって全てがLEDになるのではないかといわれておりますが、私はそうは思わない、思いたくない一人であります。確かにLEDが盛んに開発されひとつのトレンドとなっております。光源としては、主流となっていくことでしょう。それでも私は、ネオンのなんともいえないファジーな暖かい光が大好きです。
 昔、旭川に夜帰ってきたときの駅前のネオンのランドマーク的な暖かい輝きが今でも忘れられません。何かアナログ的な光なのだけれどほっとするような暖かい光、この色合いはLEDでは出すことができないと感じるのは、私だけでしょうか。
 厳しい時代ではありますが、おかげさまで今年創業60年を迎えることができました。これもお客様をはじめ皆様方のおかげと感謝いたしております。これからもネオンの灯を消すことなく、少しでも社員みんなが誇りをもって働ける会社にすべく頑張って行きたいと思っております。



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