私のネオン屋稼業奮戦記

 Vol.96
ネオン屋人生
     北海道支部 (株)野口工芸社 野口雄平

野口雄平さん  弊社は先代の社長である私の父が昭和41年に創業しました、そして昭和46年に設立することができ、創業から数えると45年になります。私が代表になってからは8年が経ちました。
 あっという間に月日がたちましたが、経営者になったばかりの時は色々苦労しました。北海道の冬は積雪などの影響もあり仕事の量が格段と減り、閑散期になります。私が先代の社長と交代したのが1月1日でまさに冬で仕事がとても少なく、すぐに運転資金が底をつきそうになり、銀行に走りました。銀行にお金を借りるのは初めてで、決算書はもちろん経営計画書まで作り、銀行に行きました。そして支店長に会い融資のお願いをすると、審査もなく即答で了承していただきました。それは社長になりたての私の力ではなく、先代の力と会社が信頼されていると実感した出来事でした。せっかく一晩残業して作った経営計画書はあまり活躍しなかったのを覚えています。
 もうひとつ苦労したことが、人間関係でした。長年正社員として勤務していた社員さんは、私の方が年下という事も関係しているのか、仕事の指示をしてもすぐに作業を開始しなかったりする事があったので、話し合いの時間を持とうと思い事務所に来てもらいました。すると開口一番に「会社を辞めさせて下さい」と言われました。その社員さんは結局退職していきましたが、やはり30年以上勤めていた社員さんが自分が社長に就任して1年目で辞めた事には、少し寂しさを感じました。
 私が幼少のころは自宅と工場が併設してありました。父や社員さんがいつもプラスチック製の内照サインやネオンサインを製作しているところや、ペンキ塗り、文字書きをしている姿をみて、いつかは看板の仕事がしたいと思っていました。
 私は現在40歳ですが、中学を卒業すると15歳で野口工芸社に入社し、定時制高校に通いながら勤めをしていました。
 私が仕事を始めた頃は、函館駅前もネオンサインが至る所で輝いていましたが、今はかなり少なくなりとても残念です。ネオンサインには昔ながらの独特の味わいがあり、だんだんと少なくなるのはとても残念ですが、これからの需要が増えるであろう、LEDサインに少し重心をシフトして行かなければと思っております。
 3月11日の東日本震災のあと全国的に節電が叫ばれ、LED化や省エネ化はこれからは更に需要が増し、避けては通れない道だと思っております。創意工夫しながらも、新しい素材にも目を向けていきたいと思っています。LEDも各メーカーがしのぎを削り、多種多様な商品が発売されているようで、それぞれの特徴をつかみ、看板に組み込んでいかなくてなりませんので、色々と情報収集をしその看板にあったLEDを選択していくためには勉強の毎日です。
 函館でネオンの製管をする会社がなくなり、かなり経ちました。函館は北海道の中では歴史が古く、観光名所にもなっている西部地区には歴史的建造物がたくさんあり、都市景観形成地域に指定されている地区になっています。昨年の6月に突如その地区に高さ約6mの「自由の女神像」が現れました(写真左)。地元の水産物販売会社が建てたものですが、隣には景観形成指定建築物が建ち、手前には国の重要文化財である東本願寺函館別院が建つという環境の中に巨大な自由の女神像が立つ状況は、正直違和感を覚えます。付近の住民や市民団体から早速反対意見が殺到し、函館市の景観審議会も「撤去相当」との指導を行い、2カ月余りで撤去されました。しかしその後、今年の2月に再び設置され、現在も設置されています。その業者の姿勢に函館市は景観条例の変更や厳罰化、罰則規定の作成を考えているそうです。これは特殊な例ですが、都市景観形成地域は景観条例でもともと規制が厳しい地域です、ネオンや看板の取付面積も少なくなっています。その地域の規制が更に厳しくなると、ネオン業者や看板業者の出番も少なくなりそうです。このように、周りを取り囲む環境が劇的に変化する中でも変化に対応できる組織力と知恵をつけて行きたいものです。
 函館市の函館山(標高334m)の山頂から見る夜景は全国的にも有名で、100万ドルの夜景と言われています(写真下)。神戸や長崎と並び日本三大夜景に、そしてナポリや香港と並び世界三大夜景にも挙げられています。最近では夜景の日という記念日も出来てまして「夜景の"や"は8、"けい"はトランプのK(キング)で13」という語呂合わせで、函館市が1991年に制定したものです。毎年8月13日は、市民が協力し夜景が最も美しく見えるように灯りを灯したり、カーテンを開けたりするので、1年のうちで最も光量が多く明るい夜景が見られるそうです。

 函館観光に来て下さる観光客の方々に少しでも喜んでいただけるように、100万ドルの夜景が110万ドルの夜景になるように営業活動も頑張って行きたいと思っています。



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