面白ブックレビュー

 
「千の風になって」紙袋に書かれた詩
井上文勝著  ポプラ社
 数年前に「千の風になって」という歌がヒットしたことをたいがいの方は記憶しているだろう。私はその手の歌は苦手で題名は知っていてもどんな曲だったか、じっくりと聞いてみたこともなかった。CDには作詞者は不明となっている。
 この本はその作詞者探しがテーマの一つである。探し当てたアメリカ女性の作詞者はもうこの世にいなかったが、その娘さんからの聞き書きで当人の半生を描いている。彼女は3歳の時に親に捨てられた孤児だった。成人してユダヤ人少女と同居していたが、その少女の母親がドイツで亡くなっていたことを知って嘆き悲しむ。そのとき買物袋に走り書きして渡したのがこの詩だった。詩は誰からも広く読まれるように署名されなかった。最近まで作詞者不祥とされたのはそのためだった。彼女の過酷な運命と無償の行為に感動し、涙を禁じえなかった。
この本の著者がたまたま私の大学時代の学友であったこともあって大勢の方に是非購読をお勧めしたい。


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