表紙によせて─11

 

「いつか見たネオンサイン B」

  浅井愼平


 初老の歌手が椅子に座り、ギターを抱え、唄っている。
 「どしゃ降りの雨の中、あいつは一人で歩いていく。街のはずれ、煙るネオンの赤がうるんで見える。どしゃ降りの雨の中、」
 ぼくたち撮影のクルーは丸いテーブルを囲んでビールを飲んでいた。
 「本当に明日は雨らしいよ」
 キタローがいった。
 「それはまずい」
 ぼくがいった。
 「ぼくには有難いです」と
 キタローはすずしい顔でいった。


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