NEONミュージアム

驚異的な歴史を誇るネオンサイン
中部支部 (株)アイセイ社 取締役工事部長 梶野保美



 今回紹介するネオンサインは、名古屋市金山駅付近で昔から多くの人々に親しまれている「麻雀荘ヒルトン」様の屋上にあります。
 金山駅は、JRや名鉄、地下鉄、市バス等の多くの路線を抱え、ショッピングセンターや飲食店も立ち並び、名古屋市の中でも名古屋駅、栄に次ぐ賑わいを見せ、昼夜とも大変活気がある駅です。そんな中、変わらず営業を続けているヒルトン様ですが、屋上ネオンの「麻」の字が不点したことで、所属の電気工事店様経由で修理の話をいただきました。当社の施工物件ではありませんが、対応可能と判断し7月初旬に受注をしました。

未だに活躍していた丸型のネオントランス
 受注後、配線構成を明らかにするため事前調査を実施したところ、ネオン管は透明赤、着色黄、蛍光管の青とピンクで、高圧トランスは15000Vが9台使用されていました。配線構成自体は珍しいものではありませんでしたが、使われている高圧トランスに驚きました。9台の内8台が、最近では見かけることのなくなった丸型の旧式トランスが使われていたからです。1台は平成15年製で比較的新しいものでしたが、安全面を考慮し、一次側の配線も含めて交換をする補修方針となりました。
 調査から一週間後の補修工事で、破損した4本のネオン管を取り外して、ネオン工場で管の製作を手配してトランスの交換等を進めると、旧型トランスの一台にレッテル表記が残っているものがありました。取り外して見ると昭和47年との表記があり、改めてその歴史的寿命の長さに驚きました。せっかくの機会なので、旧型トランス一台を会社に持ち帰り、電気のテストを実施しました。すると絶縁抵抗が500V/40MΩ。テスト用のネオン管を点灯させたところ、正常に輝いていました。現在までの約43年間も点灯し続けていたと考えて、時間に換算すると8万時間程になります。途中消灯した時期があったとしても、相当な年月を雨風をしのいで持ち続けたことは間違いないと思われます。


LEDの台頭で考えるネオンの将来
 当社でも、名古屋駅前にある大名古屋ビルヂング(現在新築中)の屋上ネオン文字は、昭和38年に設置してから平成13年の全面改修まで、33年間不点なしで正常に点灯し続けた記録があります。
 しかし時代の流れとともに最近ではLEDへの置き換わりが加速し、ネオンの需要が激減してきました。私自身もLEDの対応に13年前から取り組んでおり、担当する物件もLEDの依頼が多くなっています。
 そんな中でも私はネオンの可能性をしっかり残していきたいと考えています。ネオンの寿命は先の話の通り、LEDを含む他の電気照明材には考えられない長寿命の可能性もあり、また芸術的な灯りはネオン独自のもので、他の照明でまねが出来ないことも事実です。以前にネオンとLEDを併用した物件を担当しましたが、満足のいく仕事が出来ました。
  私が会社に入社し、ネオン業界に足を踏み入れたのは先のトランスとの製造年と同じ昭和47年です。15年程前まではネオン一筋で、ネオン配線図や原寸版下の作成、現場の監督及び実際の作業まで多くの実戦を経験してきました。また大型物件では点灯式を何度も仕切り、感激を味わったことはしっかり記憶に残っております。そういう誇りをもった仕事にめぐり会えたことに本当に感謝しています。
 この度「驚異的な歴史を誇るネオンサイン」と言う見出しと致しましたが、当時の施工に関わられた先輩の職人さんや製造メーカーさんには心から敬意を表します。またこれからもお店の繁栄とともに末長く点灯し続けていくことを心から願い見守っていきたいと思います。


※ 尚、トランスが昭和47年製造なので色々調べたところ、-内部のコンデンサにPCBが混入していたことが発覚したので管理会社に報告して処理方法の相談をしました。その後処理方法が決まり、専用のカプセルが用意されることになり、8台分を挿入してお客様の方で保管して頂けることになりました。


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