点滅希

 
 「おかれた場所」  
    

 最近ベストセラーになった本の題名に「おかれたところで咲きなさい」というのがあった。著者も本の内容も知らない。ただこのフレーズだけが頭に残っている。人それぞれに運命は付いて回る。私は生まれた場所と時代こそ運命の最大のファクターではないかと思う。与えられた運命の中で最善を尽くすということしかできない。
 そういった意味では私の人生は最大限に恵まれていた。生まれた翌年に太平洋戦争が始まり、終わったのは5歳のとき。それから今日まで70年間、日本は平和だった。物心のついた時から食糧不足、もの不足を味わった。貧乏のみじめさも身にしみた。だが、戦争の本当の悲惨さを知らない。軍隊経験も過酷な戦場の体験もない。時代はどんどん豊かになった。明日は今日よりもきっと良くなるとだれもが思った。高度成長、バブル経済を経て、低成長時代を迎えたのは私が60歳を迎えてからである。右肩上がりの人生は最高と言える。
 生まれた場所も日本でよかった。中東やアラブの紛争地で生きることは大変なことだ。民族問題、人種問題、宗教問題のすべてに日本人は脅かされることなくやってこられた。最近の難民問題の当事者にもならなかった。
 最近の子供は食べるものには困らない。おもちゃはあふれるほどあたえられる。でも不安要因がどんどん増えてきて将来に希望が見えない。彼らははたして幸せと言えるのだろうか。

(愚庵)

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