ネオン屋稼業奮戦記

 Vol.123
いつの間にか社長になっていた私…その後
    東北支部 東北エスピー( 山田 浩

山田 浩さん  3年前、2013年NEOS新年号(136号)に社長に就任して4年目の間もない私が、この題名で原稿を書かせていただく機会を得ました。
 31年前25歳で、当時の東北エスピーに入社して、その時の自分のこと。その当時の会社のこと、そして業界の様子。そして、なぜか1社員である私が、いつの間にか社長になっていたという内容でしたが、今回は「その後」と題しまして、経営者としてここ7年間の中で、私がどんなことを思い、どんなことをしてきたか?そして、どんな悩みが出てきたのか?そして、何が変わったのか?をお話ししたいと思います。
 いつの間にか社長になっていた私。リーマンショック9カ月後の大きなマイナスからのスタート。最初は、社長になったからといって今までと何ら変わらず、朝から夜遅くまで仕事をこなす毎日でした。変わった事といえば、山田さんと言われていたのが、社長といわれるようになったことぐらい。
 しかし、小切手や、回し手形に会社の代表印を押すとき、今までになかった自分の責任の重さを実感しました。先代の社長が残した東北エスピーの「暖簾」と二十数名の社員さんの雇用を守っていかなければなりません。
 まず最初に私がやったことは、いったい何の為に何を目的として会社を経営するのか?経営理念を作ることでした。もともと先代の社長が残した社訓「東北エスピー五信条」という社員の守るべき心構えがあって、朝礼の時に毎日一つずつ唱和していたのですが、これといった経営理念というものは、なかったのです。そこで、
・我が社は、美を創造し社会に貢献する。
・我が社は、従業員を活かし、真の幸せを創造する場として存在する。
 この2つを経営理念として事務所の壁に掲げました。その思いとは、美しい看板づくりを通じて、街に彩りを与え、活気を与えること。働く社員さんが、本当の幸福感を得られるような会社作りをすることです。
 次に行ったことは、社員の皆様に自分の思っていることをどう伝え、会社を1つにするかでした。
 以前は月に一回不定期で、社員全員を集めて会議を開いていました。これを毎月20日前後に必ず行い、私がレジュメ資料を作って、前月の売り上げ金額や、利益、その月の目標や、会社からの連絡事項を社員さん全員に資料を配り発表するというものです。
 目標は、自分のへたな筆ペンの文字で不要なコピーの裏に書いて階段の踊り場の壁の掲示板に1カ月貼って置くようにしました。
 第1回目の平成21年10月の社内会議の内容は、我が社の経営理念の発表でした。
 それから、7年間このレジュメを作り、社員さんに渡し、毎月の目標を発表する社内会議はずっと続いています。
 毎週月曜日の朝7時半からは、各セクションの責任者、事務所の業務の担当者を集め行っている工程会議を行います。月の工程表を配り、各担当営業が、仕事の内容・納期について発表し、運送・重機の手配などもチェックします。誰の担当の仕事でも、会社全員に情報の共有化が図れるようにしています。
 自分はサラリーマン出身の社長…社員であった私は、社員さんの気持ちもわかっているはず…最初の1〜2年は、とにかく無駄な経費を削り会社を維持すること、少しでも利益を上げることでがむしゃらでした。会社のことを良く考えてくれる社員さん。それに比べて中には自分勝手なように見える社員さん。会社を守らなければならないというプレッシャーで、ついつい、強い口調で人を責めたこともありました。
 気が付いてみると、社員さんにとっては、私は今は、もう同じ社員では無いのです。
 皆と同じという気持ちでいたのは自分だけだったということがわかった時、故篠崎喜代子社長が言っていた「経営者は孤独、寂しいものよ」という言葉の意味を痛感しました。
 きっと今頃天国から「山田、やっと私の気持ちがわかっただろう」と舌を出して笑っているかもしれません。
 ここ7年間で、会社を辞めたいと言ってきた社員さん。家庭の事情で辞めなければならなくなった社員さん。どうしても辞めてもらわないといけなくなった社員さんもいました。それは、すべて社長が決めなければなりません。それで良いのか、悪いのかは別にして、決める事も経営者の仕事です。
 最近は、所属しているライオンズクラブの仲間の経営者や、同業の組合の社長に自分の悩みを相談したりすることもありますが、尊敬する大先輩に「いろいろな社員さんがいるけれど、それを良しとするのではなく、許してあげることも大切」という意味のことを言われて自分の器量の無さを、深く反省しました。
 今の目標は、常に平常心で、言いたくなったら良く考えて言葉にすることです。

 今の私があるのは、先代の社長と前社長のおかげ、会社をやって行けるのは、一緒に働く社員さんたちのおかげ。
 今年36期目を迎える会社。
 いつの間にか社長になっていた私です。



Back

トップページへ戻る



2016 Copyright (c) Japan Sign Association