サインとデザインのムダ話

 
街を動きやすくするシームレスな公共交通サイン
渡沢 功
1941年生まれ。環境デザイナー。
公益社団法人日本サインデザイン協会理事/特定非営利活動法人景観デザイン支援機構副代表理事。
サイン・ストリートファニチャをベースにした環境デザイン領域で活躍。
日本万国博覧会EXPO'70ストリートファニチュア計画・設計、富山港線トータルデザインなどを担当。
SDA大賞、土木学会景観賞、グッドデザイン賞などを受賞。
宮沢  功さん

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開かれ、外国人が安全・快適に移動できる環境づくりがテーマとなっている。東京は世界一公共交通網が整備され便利であるが、交通事業者や路線の多さ、相互乗り入れ直通運転などによる案内誘導システムの複雑さによる分かりにくさが課題である。具体的には首都圏の約10の交通事業者それぞれが複数の路線と各路線の列車種別を持ち、各社の表示システムの違いなどが利用者には分かりにくく、路線相互の乗り入れ直通運転も多いところでは五つの路線を乗り入れていて、便利な反面わかりにくい部分もあり、これらの内容を外国人に分かりやすく伝えることが課題となっている。
 そこで東京都や鉄道各社では2020年のオリンピックに向けて公共交通サインをわかりやすくする試みが行われている。首都圏の東京駅、新宿駅、渋谷駅、池袋駅の主要な交通ターミナルでは乗り換えなどに関わる表示内容について共通化したルールを検討し整備することが検討されている。具体的には路線や駅名など日本語で表示されている部分についてそれぞれマーク化し、補助的に英文を表記、駅名についても路線マークと連動した駅ナンバリングが行われ、乗り換えの案内誘導表示などについてはレイアウトシステムの標準化などが検討されている。
 民間の事例としては東京から1時間半と近い箱根地域の観光地に対して小田急箱根ホールディングが関係する箱根登山電車、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウエイ、箱根観光船、箱根登山バス等の異なる交通機関に統一した駅ナンバリングを導入し、箱根地域をカバーする交通機関を視覚的にもネットワークしている。またチケットシステムについても2日間、3日間の箱根フリーパスを発売し箱根地域はほとんどの交通機関が駅ナンバリングを頼りに自由に乗り降り出来るシステムとしている。

■多様な鉄道サインの表示類

■路線マークの採用によるネットワークイメージを表示

 海外を見ると公共交通機関の共通カラーリングや多くのヨーロッパの観光都市で見られるバス、トラム、地下鉄、中距離鉄道など公共交通機関共通のフリーチケットを採用するなど、かなり自由に移動できる仕組みになっている。
 中でも優れたシステムとして紹介したいのはロンドンのTransport for London(ロンドン交通局、略TfL)の公共交通のサインシステムである。ロンドンの地下鉄は1863年、地下鉄の開通をきっかけに鉄道会社が次々に開業し路線が増え、会社が違うことから乗り換えなどに様々な支障が出てきて地下鉄、鉄道路線が統合され、1933年にロンドン地下鉄,路面電車、路線バスといった全ての公共交通機関会社の運営組織Transport for London(ロンドン交通局)が設立されロンドン交通局の傘下に入った。このような経緯を経たTfLは、ロンドン公共交通大半の交通政策とシステムの運営を業務とし、その範囲は長距離バス、路線バス、地下鉄、船、タクシー、自転車、LRT、街路と広範囲に及んでいる。そのコンセプトは“TfLによって生み出されるメッセージの質と一貫性が、交通ネットワークを使用する利用者の安心と信頼に役立つことに有効であるとしている。そのため各社のロゴマークは地下鉄の赤い円に青い横棒のイメージを共通のモチーフとし、各交通機関会社の色彩を設定、サイン表示には共通書体を使うことにより公共交通としての統一イメージと確かな情報伝達を確保している。これらの考えは、異なる交通機関を円滑につなぎ公共交通ネットワークとしての快適な移動を可能にし、ロンドンを訪れる観光客全てに対しロンドンという都市そのもののアイデンティティを表出している。

■統一されたデザインによる異業種交通のTfLロゴマーク

■公共交通統一カラーリング

 2020年東京オリンピック・パラリンピックという海外観光客受け入れの絶好のチャンスにオリンピック期間中のみならずそれ以降の各地への観光客の安全・快適な移動を可能にし、日本という国をより深く理解してもらうための公共交通機関の利用システムが少しでも良い方向に整備されることを願いたい。


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