提言

 

警鐘:一部屋外広告物条例の人命軽視を憂う

  関東甲信越北陸支部 アオイネオン(株) 横山 巖


看板落下による重大事故の発生と点検の見直し
 4年前に発生した、看板落下による重大な人身事故は、私たち屋外広告業界に激震を与え、安全安心第一への大きな潮流のきっかけとなりました。
国交省と屋外広告業界団体の対応
 国交省は事故発生後直ちに私たち業界団体を招集して、屋外広告物の点検基準作成を進めさせ、点検技能講習の実施を要請しました。これに応えて、(公社)日本サイン協会と、(一社)日本屋外広告業団体連合会が共催しているのが、「屋外広告物点検技能講習」です。
 国交省は、看板事故を防止して人命を守るという趣旨から、点検の実効性を高めるために、技術的なスキルを持つ者による点検の実施を求めました。そして「屋外広告物条例ガイドライン」に、この点検技能講習の修了者を具体例として記載しました。
 ガイドラインは、全国の地方自治体が条例を作る際のお手本にするものです。しかし、これは国からの提案のようなものであり、「強制力」が無いことに留意しなければなりません。
地方自治体の対応
 屋外広告物条例を持つ都道府県、政令市及び中核市、景観行政団体(市町村)等の数は、全国で百数十カ所に達します。それらが、国交省のガイドラインに沿って屋外広告物条例の改正に進み始めました。
 これまで全国の地方自治体には、屋外広告物の許可更新時に安全点検を義務付けていなかったり、点検を義務化していても、実施者に資格要件を定めていなかったり、点検報告書が形骸化しているところが、少なからずありました。
 国交省の施策に協力して、私たち業界団体は全国の地方自治体に点検の重要性を訴え、条例の適正化を求めてきました。既に条例を改正して許可更新時の点検実施者の資格要件を厳しく定めたところも出てきました。
一部地方自治体の条例改正に疑問
 このような安全重視の流れにも関わらず、「点検実施者の資格要件を定めない」まま、あるいは「屋外広告物講習会修了者(※)を資格者として認める」内容で、条例改正を実施している地方自治体があります。
※屋外広告物講習会は、屋外広告業の登録に当たり、法令を守るという責任を負う業務主任者の講習です。点検技能講習とは趣旨も内容も違います。
何が大切なのかをはき違えていないか
 私が、ある地方自治体の方から聞いたことですが、「許可申請における資格要件を厳しくすると、申請の出来る業者が限られてしまい、申請が減ってしまう」という考え方があるのだそうです。申請数の実績が大切なのだと聞こえます。これには驚きました。
 もしも専門知識を有しない者による誤った点検で、危険な看板が許可を受けてしまったら、事故のリスクは確実に高まります。人命優先には程遠い考え方だと言わざるを得ません。6〜7割に上る違反広告を改善できない現状ではありますが、少なくとも許可物件の安全性は確保すべきです。
 一部地方自治体の屋外広告物条例に於ける、このような考え方は人命軽視ではないかと憂います。
地方自治のあり方を問う
 地域特性を考慮した景観形成など、屋外広告物条例に独自性を持たせることは良いことです。しかし、安全に関わる基準は国主導により全国共通であるべきです。すべて丸投げというのは、地方自治のあり方として如何なものかと思います。


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