点滅希

 
 「公私融合する」 
    

 もうずっと前の話になるが、能登半島を周遊する県の観光事業に参画し、観光地図そのものをゼロから作るという仕事をした。県には公式の観光地図があるものと思い込んでいたが、その時初めて存在しないことを知り驚いた。一般的な地図はあるが、観光に特化した公式なものはないということだった。しかし、これは面白いことになる…とも感じた。そして、夏の初めから秋の終わり頃にかけてほぼ独りで完成させた。
 その中での仕事は多岐にわたる。各市町村に入り込んでの課題対策から観光ポイントの調査(評価)や具体的なコースづくり、正式呼称・紹介文・写真等の整理。そして、外国語表記のマニュアル作りに至るまで、カタチになるのはサインや印刷物などであったが、そこに至るまでの作業は実に多様性に富んでいた。周辺の魅力整備で具体化につながったプランもある。
 無数の接点が大きな広がりになっていく。地域やその土地の人たちからは、いつの間にか新しい要望が出てくる。それが自分にとっての新しいパワーにもなっていく。どこまでが仕事なのか?と自問する余裕もなかった。
 最近、外野席のようなところから見ていて思うのだが、仕事を楽しめない人が多いみたいだ。同時に腰を据えて相対する事業を担える人も少なくなったのでは。
 モノとコトという色分けがある。モノは納めれば一応終わる。だが、コトは終わらない。この終わらないという感覚を素直に持てる人が、実は仕事を楽しめる人なのだと思う。簡単ではないが、そうむずかしくもない……。

(N.コト)

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