講演より

関東ネオン業協同組合秋季経営セミナー(H16.10.26)より
屋外広告の今後と我々の進むべき道(W)
武山良三氏
国立高岡短期大学産業デザイン学科 教授
SDAサインデザイン協会常任理事


インターネット活用

 街角のパソコンでダウンロードしてきたんですが、ネオン協会の参考事例としてOAAAというのがあります。 URLはwww.oaaa.orgです。ネオン協会はISAの会員ですがアメリカの広告物の元締めみたいな形で、いろいろ情報提供しています。このサイトを見ると、アメリカのすべての屋外広告事情がわかるぐらいの充実したデータになってます。
 やっぱりマーケティングがいかに重要かということをいっている。いろんなデータも掲載されてます。about outdoor advertisingという一番最初の方の部分に屋外広告物の今の考え方が書かれてます。これも非常に参考になります。traditional outdoorこれはいわゆるビルボードが並んでいるわけですが、真ん中にnon-tradidional outdoorということで、ストリートファニチャーやトランジットがあがってます。要するに今までビルボード専門にやっていた業者もバス停のシェルターのサインとか、あるいは空港、駅、LRTも向こうでどんどんできてきます。altern
ative outdoor ということで、最近の傾向はいろんなメディア関係が出ていますよという事を流してます。皆さんお聞きになったことがあると思いますが、OOHつまりout of home media 。屋外広告物だけじゃなくて交通広告も含めて、とにかく家を一歩出たら、そこで触れる全ての広告物はout of home mediaという考え方ですね。全体の傾向としては今までのビルボードだけに頼らない複合的なメディアミックスを目指して組んだという姿勢は、ホームページからも明らかに見て取れます。
 それから例えばFAQ、アメリカの屋外広告物で今一番業界で大きいのはどこ?という質問があり、その答えが出てます。ちなみに第一位はバイアコム・アウトドア。第二位はクリアチャンネル・アウトドア。三位がロウアー・アドバタイジングですね。今度はそのベストテンのリンクページがついてます。こんなの今までは絶対できなかったことです。あるいはアメリカで広告主で一番お金を出しているのはどこか?ローカルサービス&アミューズメントと出ます。要するに製造業じゃないんです。二番目がパブリックトランスポーテーション・ホテル&リゾート。三位がリテール。要するに製造業は後の方なんです。一番お金をかけているのがマクドナルドです。そういうデータ全部ここにあります。それからバイアコムのHPはあまり面白くなくて逆に、二位のクリアチャンネル、これは充実のホームページで一見の価値があります。そこがPDFファイルを提供していて、これが百何ページあるのかというくらいすごいものです。自分たちが売っているアウトドアのカテゴリに始まってありとあらゆるデータが載ってます。しかも、どこの場所がいくら、どれだけの人が見ているというデータもある。これ、めちゃくちゃすごいですよ。見るだけでわかると思います。辞書を引けばもっとよくわかると思いますが、教科書みたいなものですね。
 これが全米のチャンネルですね。これはビルボードのページ。各セクション別に、プロバイドコミュニティ・オブ・アン・アドバタイジング・メッセージ・スルー・ジ・イヤー、年間を通して情報を提供できるのがビルボードですよと。ベネフィット、消費者にとってどういう利益があるのか書いてありますね。ディストリビューション、どこに配置してるか、パーマネント、耐久性や、サイズ。デジタル・アート・リクワイヤメンツ。要するにこの広告物をしたかったら例えばフォトショップでこういうデータをくれたら出します、と詳しく書いてあります。めちゃくちゃお役立ち情報ですよ。今までは、自分のところのノウハウは隠すべきものだったのが、隠していたら取り残されます。今はどんどん出したもん勝ちですよ。最近インターネットの印刷も格安印刷ってありますが全部明朗会計。A4で何枚やったらいくらと出ていますから安心して頼めます。そういうことが今デザイン業界、印刷業界では起こっているということです。
 とにかくありとあらゆるデータが載ってます。これはバスストップとかその周辺のもの。次のページはオファーズ・アウトスタンディング・ビジュアリティ・ビジブリー・アンド・クオリティ・インプレッション・ウィズイン・ザ・グラス・ショーケース、要するにガラスのショーケースみたいに、視覚的クオリティの高い印象を与えるものが提供できますということですね。全部ワンコメントでその媒体が持つ特性をちゃんといっている。LEDもクリアチャンネルが管理してるんですね。これ参考にしていただいたらと思います。
 いわゆる大都市部でどういうように広告に軸足を置いたネオンを考えていったらいいかというのは、こういったことが非常に参考になると思います。あくまでメディアとしてどういうふうに戦略を立てていくのかということがポイントです。

ネオンの再評価
 あともう一つはやはりこれも衰退しているいろんな業界の再活性化の絶対にやるべきプログラムとして、そのものの再評価です。例えば、私の大学のある高岡の地場産業である銅鋳物、軽やかにモダンに見えるように一生懸命デザインするんですが売れないんですね。なぜかというと無理してるからなんですね。なにかをもう一回売りたい時には、そのものが持っている意味合いをもう一回考える。今という時点で再評価することが必要なんです。銅器でも重たいとかそういったことを否定してはいけないと。重たいんですが、触ってたらすごくいい光沢がでてくるわけです。じゃあ重たくって、触るような物って何があるのと、そういう発想していかないとですね。今の銅のイメージを変えようとしたって、銅は銅、それが個性。重たいのがいやだったら銅やめてアルミにすればいいんですよ。そういうことで、素材の特性を再評価しなければなりません。
 じゃあネオンの良さって何なんでしょう。一番上にネオンと書いてください。皆さんの事業所でやっていただいているので結構ですけど、その次に例えばLEDディスプレイを入れてください。パナグラ入れてください。そしたら、例えば、表現としてどんな表現ができるのかと。ネオンというのはアニメーションもできますけど、ロゴをぼこっと出したりとか、非常に記号的なものが得意であると。LEDは動画ですけど、非常にテレビ的な動画ができる。それからパナグラは静止画だけど非常に美しい写真的な画像が作れるということですね。そういうように、次は照明としてどういうような光なのか、コストは、耐久性は、それぞれを比較検証してネオンの良さはどこにあるのかという事を見直していくことが必要と思います。
 あくまで個人的な感覚ですが、ネオンを見ていて魅力的だなと思うのは、“ゆらぎ”なんですよ。これはLEDの光にはないのではと思ってるんですが、どことなく明滅感があるというような、日本人というのはこのゆらぎ感覚に非常に弱い。障子にサーッと映るススキのような陰影感、あるいは川の流れ、そういったうつろうものに非常に感覚的なものを感じるんですね。LEDはどうしてもデジタルというか、メディアというような印象が強い。あれを見ていると結構ピーンときて眩しいですよね。要するに見つめていたいと思うような光ではない。環境演出に使うというのはなかなか難しいかもしれない。私はネオンの方がそういう部分では可能性があるのではと思うんです。人の感性に密着するような施設であったり環境であったり、そういったものはどういうものがあるのかという事をヒントとしてあげたいと思います。

 戦略としては、方向は三つしかないんじゃないかなと思います。一つはネオンに徹底的にこだわると。LEDが出ようが何しようが、うちはネオンだ、というようなパターン。それから二つ目は、もう新しいメディアはLEDなんだと、もうLEDに鞍替えしてどんどんそういうものを開発していく。3つ目はネオンの特性を活かしながらも新しい技術を積極的に取り込んでいく。そんなパターンがあると思います。どの道を歩むか、それは事業所の個性だと思います。うちはものすごい職人さんがいるから、ネオンにこだわりたいと。で、ちょっとアーティスティックな所に踏み込むくらいに、ネオンこだわるんだと、考えられる事務所があっても良いでしょう。それは皆さんのケースバイケースで考えていただいたらいいと思います。     (続く)

Back

トップページへ戻る



2005 Copyright (c) All Japan Neon-Sign Association