点滅希

 
 年賀状  
    

 この業界に在って筆字くらいは書けなくては、と軽い気持ちで習字を始め、三ヵ月経った。満を持して年賀状を書く。
いまいちの 筆字で挑む 年賀状
 しかし、目上の人の分に限って変になってしまう。筆字ですらすらとはいかない。筆字で「挑む」というあたり苦戦の跡がにじむ。そこで、
達筆の 掛軸手本に 賀状書く。
 書きはしたもののどこかぎこちない。うまく書けないものだ。それを見ていた娘が笑う。「パソコンがあるのに……」
 冗談じゃない。年賀状くらい手書きで誠意を贈らないと。これ、年寄りの意地である。更にそこで、
年賀状 書くのをやめて 猛特訓
と、相成る。その成果あって、どうやら仕上がったのが五日目の夜明け。
四百枚 賀状書き終え 朝湯かな
 年賀状騒動記、かくして終わる。来年もいい年でありますようにと、祈りながら。

(忠)

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