点滅希

 
 『今度こそ』  
    

 小さな三階建ての自宅は二階に玄関があり、外階段で出入りしている。その中程に娘が買ってきた常緑樹の鉢植えが置いてあった。花も咲かなければ実も成らない。只々、緑を楽しむことのようである。それが一メートル程に育つと一寸家の中へ持って入って、とはいかない。最近ではその存在感が薄れ、雨でも降らない限り水も与えていない。運も悪かった。今年の夏は特に暑く日照りが続き、八月になるととうとう枯れてしまった。幹一本、突っ立ったまま放置されてしまった。十月に入ったとたん、雨が良く降った。気温が平年より高かったせいか、枯れた根幹から新芽が生えてきた。とても瑞々しく愛らしい。「よし今度は大切に育ててやろう」と思った。早速、日当たりの良い門側に並べてある鉢植えの横へ仲間入りさせた。ここなら放水ホースもあるし誰かが水をやるだろう。小生だって。
 その後その若葉は20センチほどに成長し親樹そっくりになった。孫にそれを話した。「ん、見た」と一言。意見も反応もない。息子にも話した。「今度は水くらいやりんさいよ」とは殺生な。どうでも小生の仕事になりそうだ。今度こそ息子や孫よりいい奴に育ててやる。

(忠)

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