World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.115  世界時計
世界時計

 クレタ島の訪問は二度目になる。青春期の第一回目のときはツアー同行者のシュールな絵を描く女流画家と意気投合し、美や愛について語り合った。そのときの思い出の場所も懐かしく歩き回った。でも、あの頃はまだ閑散としてひなびた感じが残っていたのに今は観光ナイズが進み、以前の小ぢんまりとした宿も探し出すことはかなわなかった。
 今回泊まったのは島一番の繁華街で広場に面した高級ホテルで、建物もしゃれている。外壁に並んだ透明ガラスの丸窓が世界の主要都市の時刻を示す時計を兼ね、このホテルの格好のサインになっていた。
 旅に出ると日本との時間差に疎くなる。時差何時間かは分っていてもそれを足すのか引くのか迷ってしまう。以前家に電話したとき、受話器に出た娘が眠そうな声で「お父さん、今何時と思っているのよ」と非難めいて言った。時間差を引くべきところを足していたのだ。
 時としてロビーに置かれた世界の時計はそんな時に役に立つがこんなに大きいのは初めて。

 





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