World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.120  砂漠の中のケーキ村
砂漠の中のケーキ村

 アラブ諸国の旅はバスか4WDである。砂漠の中の一本道を終日ひたすら走って次の目的地にたどり着く。時々通過する村では道路沿いに埃だらけの粗末な建物が並び人間と家畜がものうげにたたずむのが見られる。
 イエメンでもそんな旅だった。眠気に誘われうとうとしていたら突然道の両側を大きな看板で埋め尽くした集落が現われた。車の数もすごい。何事かと思っていたらわれわれ一行の車もその一角に停車した。なんと、ずらりと並んだ店が全部ケーキ屋さんなのだ。
 巨大な突き出し看板が空を埋め、軒上の壁面看板の下には垂れ幕サインとその賑やかことと言ったらない。ガラス張りの店内では幅広の台にたらいのように大きなアルミの容器がケーキ状のをびっしり溶かしこんでいくつも並べられている。客の注文に応じてそれをナイフで切りだし、箱に詰めるという寸法だ。色は悪いし体裁も何もあったものではない。甘いものに目のないツアー同行の女性陣もたじたじ。こんなに多くの店が並ぶからにはみんなかなり遠方から買いに来るのだろう。

 





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