World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.186  石畳とモザイクのサイン
石畳とモザイクのサイン
 パンデミックのため国外どころか他の街にすら行きにくい状況のドイツなので、今回は地元フライブルク市の可愛らしいサインを紹介したい。フライブルク市は2020年に900周年を迎えた中世から続く歴史ある小都市である。ヨーロッパの街らしく旧市街は石畳なのだが、モザイクでできたサインがたくさんあるのは街の特徴の一つだ。写真はパン屋、ケーキ屋、アイス屋など店舗のサインで、このほか街中には花の模様や姉妹都市のワッペンなど多様なデザインをみつけることができる。そのため散策時は足下を見て歩いたり、新しいモザイクを発見する楽しみがある。
 これらはフライブルクの舗装マイスターであったアロイズ・クレムズ(Alois Krems)が1900年ごろに始めたと言われており、彼が南フランスでのマイスター修行の際に見かけたモザイクから着想を得たことが発端なのだそうだ。
 ところで、街は変化するものである。開店する店もあれば、閉店する店や移転する店もある。サインもそれに合わせてなくなったり新しくできたりしているが、全てが新しくなっているわけではなく、そのまま残っているものもあるので、その場所に昔何があったのかを回想できるのは楽しい。最近では現在改装中の美術館のミュージアムショップの前と、公共交通機関運営会社の前に新しいサインが登場した。こうやって新しい変化も新技術ではなく、伝統に則り脈々と続けていくことで街の文化的特徴を育んでいると言えるだろう。
田嶋佳子





2021 Copyright (c) Japan Sign Association