VOL.32 砂糖キビ鉄道の一枚のステーションサイン

 ほんもののハワイに触れたければオアフ島からローカル機に乗り継いで近隣の島々に足を伸ばすことだろう。未だ、過剰な日本人観光客と商業主義に汚染されない、静かでゴージャスな自然の香りが待っている。
 マウイ島のラハイナから一大リゾート地カーナパリに向かう砂糖キビ列車の旅もそんな雰囲気をたっぷりと味わわせてくれる。もともと砂糖キビの運搬用につくられた鉄道が今は観光用として活用されている。クラシックな小さな機関車が引く赤い客車に乗って一面の砂糖キビ畑を行けば、誰しも胸がウキウキしてくるだろう。そこを抜けた後に広大なカーナパリ・ゴルフコースのど真中を突き進む。ゆったりと起伏する芝生の先は真っ青な海が広がり、時にクジラが潮を吹く光景が遠望される。まさにハワイならではの醍醐味である。
 終点のコウプリ駅には駅舎も無ければ改札口も無い。ここが駅であることを示すのは一基というよりは、ただ一枚という表現がピッタリの駅名サインだけ。しかし、そのおおらかでユニークな形体の存在感は小さくない。いかにもこの鉄道にふさわしいムードをかもしだしているではないか。
 





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