VOL.40 超近代建築プラハ国民劇場の自立サイン

 天才モーツァルトとサリエリの葛藤を描いた映画「アマデウス」は当時の建築や家具調度が徹底して使われている《完壁主義》でも有名だが、ロケの大部分はモーツァルト時代の雰囲気がそのまま残るプラハで行われている。中でもオペラシーンに使われた典雅な木造建ての劇場は、垂涎の見ものであった。
 この劇場は今でも現役の国立劇場として使われていると聞いていたので、地図を頼りに訪ねてみた。そこに建っていたのは黒いガラスブロックで覆われた観客スペースと透明ガラスのロビースペースで構成された超近代建築であった。てっきり建て替えられたものとばかり思い、ガッカリしたが、後で調べたらここは国民劇場。「国立劇場」と「国民劇場」は別ものだった。もっとも考えてみれば国宝級の文化財を壊すわけもない。
 それにしても国民劇場のサインは見事だった。総ガラスの壁面を背にして独立した構造になっているようだが、建物の壮大さに見合ったスケールで、お互いが引き立て合っている。道路をはさんで対面する古典建築が、ガラス壁に映りこんで奇妙な調和を醸し出していた。
 国立劇場には今度行ったときに訪問して、是非とも内部も拝見したいものだ。
 





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