VOL.41 南フランスの欲張り情報サイン

 5月初旬のニースは例年になく、天候不順で肌寒かった。
「いつもの年ならもうトップレス美人の絶景が見られるのですけどね」
 ヨーロッパツアーにかけてはベテランを自称する添乗員がすまなそうに言う。かの有名なネグレスコホテルの前面にはどんよりとした空の下、灰色の海とひとっこ一人いない、変哲もない砂浜が広がるばかりだった。
 街中は更に殺風景で、ごくありふれた地方都市といった風情。何か当てが外れたような気分だったが、そのかわりに目にしたのがこの情報サイン。巻き取り式のパターン変換広告スペースとメッセージボード、街の案内地図に時計と実に盛りだくさん。狭いスペースに何でも詰め込むのがお得意の日本でもこれだけ多機能なのにはお目にかかったことがない。欲張っているわりにはスッキリ見えるのはデザイン処理のよさ故だろう。フランス人は古い街並を大事にする反面、街中に現代感覚に溢れるシャープなデザインもどんどん取り入れ、それがクラシックな景観ともよく馴染んでいる。そこはやはりデザインセンスの問題なのだろう。
 同型のサインは南フランスの他の都市でも何度かお目にかかった。写真はモンペリエという小都市で撮ったもの。
 





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