World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
  VOL.58  世界最古のサイン

 トルコのエフェッソスはエーゲ海最大の古代都市といわれる。40度に近い炎天下の遺跡観光は身にこたえたが、世界遺産の素晴らしさはそれを補ってあまりある収穫であった。その日はちょうどエーゲ海クルーズの大型客船が着いた当日で、その観光客と重なり遺跡は大変な混みようであった。

 2万4千人を収容したという大劇場から市場、学校、図書館、神殿に公衆トイレまで都市に必要な機能は全てそろっていて、その完璧ぶりには驚嘆した。

 ひときわ人気があったのは大理石に路面に彫られた「娼館の広告」と呼ばれるもので、1枚の敷石を囲み人垣が出来ていた。

 写真の足型は娼館の方向を示し、その右に、うっすら見える女性の顔は「女の子が待っている」という意味だそうだ。ほかにもハート形とお金と見られる四角形が彫られていて「お金を持っておいで、心を込めてサービスします」というふうに解釈されているが、私には単なる石工の落書き(この場合は落彫りか)のようにも思えた。

 しかし、娼婦は人類発祥の起源まで遡る世界最古の職業といわれているのだから、そのための案内サインが屋外広告のそもそもの始まりだったとしても不思議ではない。

 





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