World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.68  ポターギャラリーのサイン
ポターギャラリーのサイン

  イギリスの湖水地方はとりわけ風光に優れる。その地のニアソーリー村には世界中の子供たちのアイドルとなった「ピーター・ラビット」を世に送り出したベアトリクス・ポターのギャラリーがある。彼女はここで半生を過ごし、童話作家として名をなした後も農業経営に専念した。童話刊行の印税で周辺の農地を次々と買い取り、景観の保護に努めた。広大なそれらの土地は彼女の死後、遺言によって環境保護団体であるナショナル・トラストに全て寄贈され、約100年近くを経たいまも当時のままの状態が保たれている。
 ナショナル・トラストについては多少の知識は持ち合わせていたものの、その活動の偉大な精神と浸透ぶりはこの国の各地を訪ねて初めて理解できた。
 会員数は約30万人、国民20人に1人で、その会員たちの会費と寄付によってトラストが買占め保護、保存してきた土地が2700平方キロにもわたるほか、200を超える歴史的建造物を所有する。イギリスではどんな観光地に行ってもナショナル・トラストのサインの見えないところはない。ダークグリーンの地に樫の葉のシンボルマークと文字を白であしらったサインは控えめで美しく、この団体の精神をよく現わしている。
 ポターギャラリーではチケット売り場の窓際にピーター・ラビットの縫いぐるみがさりげなく置かれていた。サインは控えめながら、窓全体がポターの世界を謳い上げているようで心ひかれるものがあった。

 





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