World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.83  ピラミッドはサインか
ピラミッドはサインか

 ピラミッドの建造物としての巨大さには誰しもが驚嘆する。その巨大さを身をもって感じたのは内部のトンネルに入った時である。狭く長いスロープを手で壁をさぐりながら歩いたとき、何千トンという石の重圧がひしひしと迫ってきた。その石の一つ一つに古代人の汗が沁み込んでいるのだ。
 このピラミッドがどんな目的で造られたのかはいまだに謎であり、諸説が論じられてきた。私にはドイツの科学者ヘルムート・トリブッチが唱えた蜃気楼文明説が興味深い。彼によれば古代文明はすべて蜃気楼と深く結びついているという。ピラミッド建設時、ナイル川河口の気候は現在とは大きく異なり、恒常的に蜃気楼が発生した。そのとき見られたのはピラミッドの上空に逆さになった巨大な三角形が浮かび上がるという度肝を抜く光景であったと彼は推測する。造形的に、何もない水平線上に置く物体として三角形はもっとも強烈な印象を与え安定している。それが天地を逆にして天空に映し出される様はまさに壮大なショーであり神のサインといえよう。
 葬られた王の霊が逆三角形の内部に造られた階段を上り、天上に導かれる幻想的な光景がふとまぶたをよぎった。写真はダフシュールの赤ピラミッド。

 





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