山口市の隣が小郡(おごおり)町、その南に隣接するのが秋穂(あいお)町だったのが、先年の市町村合併で山口市になりました。
この秋穂地区は北の丘陵地帯から瀬戸内海に続くゆるやかな地形が広がります。
旧秋穂町に、弘法大師ゆかりの八十八カ所巡礼の番所があります。
四国のお遍路のような大がかりなものでなく、それぞれの八十八の番所は、おおかたが無人の極めて質素な小さなお堂で、畑の中、森の木陰などに点在し、中にそれぞれの本尊の像が安置されています。
小さいながらもお堂は手入れが行き届いていて、長い年月、大切に守られてきた様が感じられます。
春と秋の彼岸には土地の人たちが番所に詰めて、茶菓子の接待が行われます。この時期、大勢の巡礼客が訪れますが、ふだんの日も、本格的な白衣の巡礼姿の人たちや、ほんの普段着の人たちまで、あちこちに道をたどる人たちの姿を見かけます。接待でいただいたせんべいをかじりながら、次の番所へと歩く道すがら、人々の厚情を思うのです。
この美しい風習のせいか、秋穂の人々、風物はなんとなく平和な空気に満たされているように感じられるのです。
さて、お大師さまの町の、もう一つの名物は、なんと言っても「くるまえび」。
波おだやかな瀬戸内の遠浅の砂浜は、昔から有数のくるまえびの産地として知られています。
養殖場も近年生産量を増やしていますが、やっぱり天然ものに限ると土地の料亭の主人。
海辺に並ぶ料亭、民宿が自慢のえび料理を供し、海の近くの山の中腹にある国民宿舎もえび料理がメインメニューです。
天然物ということで、フルコースのえび料理は料金が七千五百円から一万五千円と、家族連れには少々荷が重いのですが、もちろん一品料理もそろっています。
当地にお越しの節は、どうぞご賞味下さい。
世の中には「エビ、カニと聞いただけでジンマシン」とおっしゃる方もいらっしゃるとか。お大師さまに免じてお許し下さい。
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