今年の「ISAサインエキスポ2007視察旅行」は、担当旅行代理店JTBとの事前打合せもスムーズに運び、充実した旅行となりました。以下、前号所載の団長報告を補足する形でレポートします。
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訪問日時:2007年4月10日(火)14:00〜16:00 |
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訪問先:クイール社(Quiel Brothers Electric
Sign Company) |
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先方説明者: |
創業者 レイ・クイール氏 (Ray Quiel, Founder) |
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社 長 ラリー・R・クイール氏 (Larry R. Quiel, President) |
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副社長 ジェリー・クイール氏 (Jerry Quiel, Vice President) |
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副社長 ゲリー・クイール氏 (Gary Quiel, Vice President) |
先方説明者:広報部長ロビン・F. シャーマン氏(Robin F. Sherman, Director,
Community Relations) |
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説明概要 |
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クイール社本社玄関 |
クイール社は、ロサンゼルス郊外、サンベルナルディノ市にある屋外広告専門業者、我々と同じISA(国際サイン協会)会員ということでもあり、ラスベガスのISAサインエキスポ開催前日で準備多忙の中、幹部総出で応対して頂いた。
創業者のレイ氏は既に現役を引退し、ゴルフ三昧の生活を楽しんでおられ、実務は次男のラリー氏が総括、営業、財務、長男のジェリー氏が見積、製造、三男のゲリー氏がサービス、取付工事、メンテナンスとそれぞれ得意な分野を仲良く分担して経営基盤を確立している。
営業範囲は南カリフォルニアからメキシコにかけてのいわゆる内陸帝国(Inland Empire=1946-48の米墨戦争でメキシコから割譲された地区)で、仕事の割合はロサンゼルス市内よりもそれ以外の方が多いとのこと。現在1,860平米(2万平方フィート)の本社工場のほか2箇所にサービスデポがあり、クレーン7台、トラック6台、建柱車1台を保有している。部材はすべて米国標準規格UTC(Underwriters
Testing Laboratory)承認品を使用し、工事はNEC(National Electric Code)に従い実施する。製品保証は1年、構造保証は永年としている。事業の性格上、特にコンプライアンスに留意した経営を心掛けており、官公庁、学校、民間企業(銀行、自動車販売店など)から絶大な信頼を得ている。
規制については、1970年代に建築関係で強い規制が行われた時代があった。この頃赤と黄色などの色制限が厳しくなりネオンは苦しかった。この頃にはシェルやエクソンといった石油企業が厳しい制限に対し反発し、州を提訴して最高裁まで争われるといった事例が頻発した。1980年末から90年初めごろになると徐々に緩和されてネオンも少し戻ってきた。代わりに最近では表示面積の規制とか、点滅サイン、回転サインなどが美観重視の観点から規制されるケースが多くなってきている。
規制は、地域のコミュニティで審議会が立ち上げられ、審議の途中で公開世論調査(パブリックヒアリング)が必ず行われ、実施されてゆくのが普通である。サンベルナルディノの場合審議委員は7名(各区代表)でこれに市長(Mayor)が加わる。政治色も結構濃く、経済人には共和党員が多く、学者、先生には民主党員が多い。
大抵の場合、サインの設置申請はマスタープランの段階で当局に提出する。周辺環境や開発計画全体を勘案して許可が下りる。審査に要する期間は、物によっても異なるが、折衝期間も含めて長いものでは一ヵ月から一年を要することもある。クイール社では申請専門の女性部長が担当していて、設計図と申請書類に囲まれて奮闘している様子が伺われた。
一般的な規制の現状だが、1970年代頃から屋上広告塔禁止の地域が多く、最近ではビルボード、突出し看板、ビル面看板などは禁止となっているのが普通といえる。違反看板は強制撤去が当たり前である。業界ではむしろ自分たちで違反者が仲間から出ないように、組織で監視体制をとっているところも多い。
(工場内状況に関しては、前号大戸団長の寄稿をご参照ください)
5. 球場でのレセプション
工場見学のあとクイール社がスポンサーをしているプロ野球シクスティシクサーズ(Sixty Sixers)のホームグラウンドであるアローヘッド球場に案内され、ボックス席でレセプションを開いてくれた。説明者は、サンベルナルディノ野球クラブ総支配人のローレン・フォックス氏(Loren
Foxx, General Manager, Baseball Club of San Bernardino, Inc.)。
米国野球界には、アメリカンリーグとナショナルリーグの二つのメジャーリーグの下部組織としてマイナーリーグがあり、AAA(トリプルエイ)、AA(ダブルエイ)、A(シングルエイ)の3段階に分かれて活躍しているが、シクスティシクサーズは、ロサンゼルスに本拠を置くドジャーズ傘下のA(シングルエイ)で、本拠地をサンベルナルディノにおいている。フォックス氏も当地に派遣されてきた元ドジャーズ本社所属の社員である。
米国では各地方都市がこのような野球場を中心に周辺に関連施設を設けて、自治体住民の憩いの場として子供たちを含めた住民交流の場を提供している。また、各系列下のマイナー球団は、系列チームに所属する選手を上下に移動させることにより上位球団の予備軍として機能している。
球団の経営は、基本的には入場料収入に頼っているものの、地元の個人や企業の寄付も経営を成り立たせる重要な要素となる。クイール社には地元有力企業としてよく支援してもらっている(逆に、球場内の看板はおおむねクイール社が施工しており、持ちつ持たれつである)。
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工場内で社長から説明を受ける |
団長からクイール社長に京都の風呂敷贈呈
(禅宗の格言、吾唯足を知る) |
大体以上のような説明で、招かれたボックス席はクイール社のようなスポンサーが顧客を試合に招待したときの接待場所や社員福祉の一環で社員家族を招待したりする場など様々に利用されている様子で、アメリカ地方都市ののどかな雰囲気を満喫させられた。