点滅希

 
 「傘」  
    

 年がら年中傘を忘れるので高級品は持たないことにしている。でも、やはり高級な傘には魅力を感じる。
 英国紳士はステッキのように細い傘をよく持っている。一方、英国紳士は傘をささないとも言われる。聞くところによれば傘はアクセサリーであって、如何に細く綺麗に巻くかが重要なんだそうだ。なるほど、一旦開いたら後が面倒なことになる。と言うことはやせ我慢か、いやこれぞ男の美学かも知れぬ。
 傘をささないのは英国の雨が霧雨だからという説もあるが、日本にも似たシーンがあったぞ。「春雨じゃ、濡れて行こうか」月形半平太の粋な科白だが、これぞ水も滴るいい男ってやつだ、舞妓の前でカッコつけた訳だが。
 傘を忘れることなく、しかもカッコいい妙手あり。よし傘を持たずに出かけよう。いや、いやいや駄目だ、やめた。雨の中、風采の上がらぬ中年男が肩をすぼめて歩いていたら気の毒がられるか、おかしな奴だと思われるだけだ。また嫌な梅雨がやってくる。

(頑)

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