石川さゆりの声が耳許に響くと「はい!大好きです」と応えてしまう。いやはや、浮れダヌキのようだ。
長らく世の中から顧みられることなく不遇をかこつ存在であったウィスキーが蘇ろうとしている。
この現象のキーは「ハイボール」である。かつてトリスバーで飲んだご同輩はご承知だろうが、これは新しいものではない。しかし、およそ40代以下には新しい飲み方として大ヒットし今や何処の居酒屋でも人気だ。
ついこの間まで、そこいらのバーではハイボールは通じなくて、涙を飲んで「ウィスキーのソーダ割り」と注文してきたものだ。
ウィスキー造り80年のサントリー、一大プロジェクトの成功と言われているが、中高年飲兵衛としては、これはひとえに石川さゆり「ウィスキーがお好きでしょ」の名曲と小雪のCMの功績と断言する。この曲はゴスペラーズ、竹内まりやに引き継がれ、今年の夏はサラリーマンの聖地JR新橋駅の発車メロディに採用されるという快挙を成し遂げた。
新橋駅のホームであのメロディを聞くと夜が待ち遠しくなる。そして男たちは夕闇と共に新橋の雑踏に飲み込まれていく。ただ、行き着く店のカウンターには残念ながら小雪はいないのだが。
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