ユネスコの「世界記憶遺産」に日本から初めて登録され、にわかに知られることになった絵と日記が本として再出版された。画家でもない著者が63歳から描き始めた絵は詳細で、記憶だけで描いたとはとても思えないほどの出来栄えだ。
坑内での過酷な労働もさることながら炭鉱所での人々の生活の貧窮ぶり、荒廃ぶりに胸がふさがる。ほんの1世紀前、このような社会が現実にあったことを我々は忘れてはいまいか。最下層とはいえこれはとりもなおさず日本の経済レベルでもあったわけだ。
描かれた人物の顔が美男、美女で屈託なく、文章にも暗さがない点がせめてもの救いである。 |
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