月刊『サイン&ディスプレイ』編集部 青木利典
静止画のみの表示でドライバーに訴求する
東京・六本木の首都高速3号線沿いに、LEDディスプレイを使用した屋外広告媒体が登場しました。2012年5月から稼働しています。媒体名は「662ビジョン」で、運営は東京メディアコミュニケーションズ株式会社です。
この屋外広告媒体は、従来の駅前等に設置されている“大型街頭ビジョン”とは異なるものです。大型街頭ビジョンは多くの場合、広告をはじめ、ニュース・天気・地域のトピックスなどの情報コンテンツを放映し、街の歩行者やビジョンの周辺に滞留する人をターゲットにしています。
一方「662ビジョン」は、シート貼りの広告をLEDディスプレイに置き換えたようなイメージです。高速道路を走る車のドライバーをターゲットにしており、動画を表示するとよそ見運転に繋がりかねないので、静止画のみの表示となっています。ニュースなどの情報発信はせずに、現状では広告のみの表示です。この広告媒体では、ひとつの静止画を最低15秒表示してから次の静止画に切り換えるというルールを設定しています。
これまでに出稿したクライアントの業種は、自動車メーカーや自動車保険などです。自動車ドライバーをターゲットに訴求する媒体として活用が進んでいますが、今後は飲料メーカーなどによる出稿もあると思われます。
静止画を切り換えて表示できるのが最大のメリットで、LEDなら1枚のビジュアルに限定されずに多彩な表現が可能となります。これまでに出稿したクライアントはこの利点を活かし、複数の商品を訴求しています。
広告枠は、1カ月単位での販売で枠は4つです。1時間のうちの連続した15分×19時間(6時〜25時)が1枠となっています。
また今年の秋には、とある屋外媒体社がLEDディスプレイ化した広告媒体を10面くらいの規模でネットワーク展開するという情報もあります。今後、この手の屋外媒体が拡大するかもしれません。
社会に貢献できる情報インフラとして活用可能
これにより従来のシート貼りの媒体は減少していくのでしょうか? 私の勝手な予測ですが、緩やかにLED化が進みつつも当面はシートが主流で、LEDとシートが共存していくのではないかと思います。
昨今のインクジェットプリンターの性能の向上によって、シート貼りの広告はとても綺麗なビジュアルを掲出できます。LED化された媒体にはシート貼りにはない特性がありますが、すべてのクライアントがLEDの特性を求めているのかと言えば、そうでもないような気がします。広告の内容によっては、ビジュアルを切り換える必要がなく、1枚の絵で十分訴求できるでしょう。
またイニシャルコストの高さもあり、資金力のある媒体社しかLED化を図ることはできないと思われます。屋外媒体は広告が付かなくても地権者への賃料が発生します。このリスクに加えて、LED化のための初期投資をするのはかなり大変なことだと思われます。
しかし、LED化された媒体には、シートにはないもうひとつのメリットがあります。それは、災害時の情報発信などに活用できるという点です。景観や電力の問題で、悪者にされがちな屋外広告ですが、LED媒体は災害発生時などには使い方次第で、社会に貢献できる情報インフラとなります。この点は非常に重要で、屋外広告の地位向上を図ることもできそうです。今後の状況の推移を注意深くウォッチしつつ、大きな動きがあるときには、当コーナーでお伝えしていきたいと思います。