最前線シリーズ 13

 

デジタルサイネージに関する執筆内容を振り返って


月刊『サイン&ディスプレイ』編集部 青木利典

 みなさんこんにちは。私は、この「最前線シリーズ」の第3回目から、デジタルサイネージをテーマに記事を書かせてもらっています。前回で執筆が10回目となったのを機に、一度、これまで書いた内容を自ら検証してみます。
 この「過去の検証」というテーマを思いついたとき、自分が過去に書いた記事に対して否定的になってしまう部分もあるだろうけど、たまにはアリかなと思いました。「情報を精査する能力がない」と言われてしまえばその通りですが、デジタルサイネージはまだまだ発展途上なのに変革のスピードが早く、私自身「これはすごい」「これは売れるだろう」と思っても、その後に考えを改めているケースが多いのです。
 それでは、以下にこれまでの内容を振り返っていきます。


デジタルサイネージ広告媒体「東京メディア」とは?
  …2011年 新年号 Vol.124
 都内のローソン約300店舗に設置されたデジタルサイネージの広告媒体「東京メディア」を取り上げて、2010年11月には広告枠が完売となったことなどを紹介しました。媒体の運営はクロスオーシャンメディアという会社なのですが、今年6月30日をもって解散しました。震災を機に広告は売れなくなったとのことで、最近では映像放映は行われていても、広告は入っていませんでした。デジタルサイネージの広告モデルの難しさを、改めて感じさせられます。


行灯看板 + デジタルイサイネージ = ツイミル!
 … 2011年 春号 Vol.125

 液晶ディスプレイを搭載したスタンド看板「ツイミル!」という商品を紹介しました。この手の商品を使って、コンテンツ制作まで受注するビジネスモデルを確立できないだろうかと書きましたが、これは無理があったと思います。クオリティの高いコンテンツがあればデジタルサイネージは販促ツールとして効果的だと思いますが、誰にでも作れるものではなく、コンテンツ屋さんに依頼すると値段が高くなります。また、「誰でも簡単に作れる」ことを謳ったデジタルサイネージ用のコンテンツ制作ソフトが多数出回っていますが、それが効果的に活用されている例を見たことがありません。
「ツイミル!」  


「街づくり・流通ルネサンス2011」からのリポート

 …2011年 初夏号 Vol.126

 総合展示会「街づくり・流通ルネサンス」の出展社の中から、デジタルサイネージ関連をピックアップして紹介しました。ここで取り上げた企業・製品の多くは、その後もそれなりに業界内で存在感を示していると思います。
18面液晶ディスプレイ  


日本から世界に向けてデジタルサイネージを輸出する
 …2011年 盛夏号 Vol.127 デジタルサイネージの業界団体「デジタルサイネージコンソーシアム」の理事長で、慶應大学教授の中村伊知哉氏にインタビューしました。
 中村氏は「デジタルサイネージは広告・販促だけでなく、教育や医療などの分野にも普及させられる」と言っていました。これは実際に進んでいて、機材を販売する側にとっては値段を叩かれがちな広告・販促分野よりも利益を出せているようです。
 また「デジタルサイネージは日本が世界に向けて輸出できる産業になりえる」という発言に私は感銘を受けてタイトルにも使ったのですが、まだ今のところこのような状況には至っていません。


“プロジェクションマッピング”が話題となった「ZUSHIメディアアートフェスティバル2011」
 …2011年 秋号 Vol.128
 プロジェクターを使って平面のスクリーンではなく建物などの立体物に映像を投影する「プロジェクションマッピング」を紹介しました。ここで取り上げたのは、小学校の校舎に幅約30mにわたって映像を投影したイベントです。プロジェクションマッピングはその後も、さまざまなイベントで頻繁に活用されています。最近では9月に東京駅の駅舎リニューアルを記念して、駅舎の全面に映像が投影されて話題になりました。道路交通法上、公道を跨いで映像を投影することは難しく、屋外で広告に活用しづらいのが残念なところです。


「カワサキ ハロウィン2011」で実施されたプロジェクションマッピング
 …2011年 冬号 Vol.129

 前号に引き続いてプロジェクションマッピングを紹介しました。川崎の複合商業施設「ラ チッタ デッラ」で実施された「カワサキハロウィン」というイベントの一環で、建物の壁面2ヶ所に約W40m×H20m、約W25m×H25mの大きさで映像が投影されました。ハロウィンにちなんでちょっとグロテスクな映像が流され、かなり好評だったと聞いています。今年も実施されて話題になりました。
プロジェクションマッピング  


ネットワーク配信型のデジタルサイネージはスタンドアローン型より有用なのか?
 …2012年 春号 Vol.131
 デジタルサイネージといえば、コンテンツをネット配信するのが当然でありそこが一番のメリットのように思われがちですが、販促の現場では必ずしもネット配信が選ばれる訳ではなく、スタンドアロンタイプの需要が高い。また売り手側は機能の豊富さなどをセールストークにしますが、用途によってはシンプルな機能で十分な場合もある、といったことを書きました。この考え方は今も変わっていません。


銀座の最先端デジタルサイネージ
 … 2012年 初夏号 Vol.132
 銀座の商業施設やアパレルブランドの旗艦店などには、最新のデジタルサイネージが導入されることが多いと紹介しました。ハード・システムだけでなく、見せ方にも工夫がなされています。銀座は屋外広告のメッカというだけではなくデジタルサイネージもかなりホット、と書きましたが大げさではなかったと思っています。


「デジタルサイネージジャパン2012」を見学して
 …2012年 盛夏号 Vol.133
 今年6月に開催された展示会「デジタルサイネージジャパン」の感想を書き、「ハーフカットパネル」と「透明液晶ディスプレイ」の展示が多かったことなどを書きました。「ハーフカットパネル」については、東武線の駅構内で実証実験が行われているのを見かけました。「液晶透明ディスプレイ」については、その後、韓国のサムスンが5年後くらいに市場が確立することを予測して、開発・改良を続けているといった話を聞きました。また今年の11月中には、透明液晶を家具や内装材にまで発展させた商品が、とある企業から発表されるようです。どちらも、今後はいろいろなところで導入が進むかもしれません。


高速道路沿いに登場したLEDディスプレイによる屋外広告媒体
 …2012年 秋号 Vol.134


LEDによる屋外広告媒体
 これは「NEOS」の前号の内容なので、内容を検証するにしても時期が近すぎます。その後の動きをひとつ挙げるとすると、「今年の秋には、とある屋外媒体社がLEDディスプレイ化した広告媒体を10面くらいの規模でネットワーク展開するという情報もある」と書きまして、その会社に聞いてみたところ、確かに具体的に動いているけど、運用開始は少し遅れるようです。
 このように振り返ってみると、デジタルサイネージの広告媒体としての難しさや、予算を抑えて運用することの難しさが読み取れます。しかしそれなりの予算があればプロジェクションマッピングのようにダイナミックな映像表現や、最先端の機器を使った目新しい演出が可能になっています。
 ここに取り上げた中で、最も今後に期待できるのはプロジェクションマッピングだと思います。最近は事例動画がyoutubeにアップされたり、フェイスブックで紹介されることも増えています。海外でも注目されている分野だと言われており、国内の実施例に対して外国人からコメントが寄せられていることもあります。プロジェクションマッピングは日本より欧米のほうが進んでいますが、いい作品を作れば情報が海外に拡散し、中村伊知哉氏が言っていた「海外へ輸出」が現実のものになるかもしれません。




Back


トップページへ戻る



2012 Copyright (c) All Japan Neon-Sign Association