最前線シリーズ 11

 

今後のデジタルサイネージは施設案内・出退勤・マルチリンガルがキーワード

月刊『サイン&ディスプレイ』編集部 青木利典
 現在、商業施設や官庁のインフォメーション用途として、デジタルサイネージの導入が進んでいます。今回は、この分野で多数の納入実績を持つ株式会社パフォーマのプロダクション・スーパーバイザー 岩田敬さんに話を聞きました。パフォーマさんは映像・グラフィックの企画・制作、デジタルコンテンツ制作・システム開発などを手がける会社です。岩田さんは最近のデジタルサイネージのキーワードに「施設案内」「出退勤」「マルチリンガル」の三つを挙げています。それらについて解説してもらいました。
─まずは「施設案内」のサイネージについてお聞かせください。
  「施設案内」とは、多数の貸し会議室を運営する商工会議所などの施設やホテルなどに用いるサイネージの表示プログラムです。商工会議所などでは、複数の会議室を時間貸ししていて、それらのスケジュールを表示する必要があります。以前は手書きしたものを貼り出していましたが、サイネージなら簡単にリアルタイムで更新できます。施設のロビー、各階のエレベーターホール、さらに予算があれば各会議室の前にディスプレイを設置し、すべてを連動させて表示します。同様の手法は、ホテルの宴会場の案内などにも使われています。
  表示する情報の入力は、既存の予約システム等に直結させる場合と、係の人が手作業でエクセルに入力する場合などがあります。
─では「出退勤」について教えてください。
  「出退勤システム」と言われる、企業が従業員の勤務状況などを管理するのに用いるシステムがあります。当社ではこれをサイネージに応用しています。
  例えば議員会館などに議員が登庁すると、昔は名前が書かれた札を裏返すことで、在・不在を示していました。サイネージを用いれば、出入り口に設けたタッチパネルを操作したり、もしくは受付の人がPCを操作して、館内に配置された複数の画面で一斉に表示を更新できるのでとても便利です。他には市役所などの窓口での順番待ちの表示や、病院で処方箋を渡すための順番待ちの表示、さらにはプラネタリウムで上映時間帯ごとの空席情報を表示するといったことにも使っています。これらはリアルタイム性が求められるので、“サイネージが役立つ、必要だ”と認められて予算が付きます。
  また市役所などでは、緊急地震速報やJアラートを来館者にお伝えする必要があり、サイネージの導入が有効です。
─それらの表示にはどういったシステムを構築しているのですか?
  大抵の貸し会議室、ホテルや官庁などはセキュリティ上、インターネット経由で更新することはできません。イントラネットとか設備用LANと言われるクローズしたネットワークで、お客様が自前のサーバーを使って配信します。そのサーバーに当社のプログラムを入れておきます。現在のサイネージ分野ではクラウド型の配信システムを販売する企業が多数ありますが、クローズした環境での運用が求められる場合、そのまま使うことはできないのではないかと思います。
  当社の施設案内プログラムや出退勤プログラムは、案件毎に若干カスタマイズすれば対応できます。お客様の費用はイニシャルコストだけで、当社に対して月々の運用費は発生しません。
  こういったサイネージを、NTTやIBMといった大手企業をはじめIT機器メーカーやシステムインテグレーターと競合しながら、サインシステムを手がける会社も受注しています。当社では、サインシステムを手がけるサイン会社さんから、「施設案内」や「出退勤」のサイネージを多数受注してきました。サイン会社さんのほうで、情報の更新頻度の高いものについてはデジタル、低いものについては従来からのアナログなサインと、明確に使い分けています。当社はデジタルの部分をお手伝いするというかたちです。
  数百万円のイニシャルコストをかけてサイネージを導入しても、手書きで貼り出す場合の職人さんの人件費を考えると、1年くらいで元が取れるのです。        
─それでは、三つ目のキーワード「マルチリンガル」についてお聞かせください。
  ひとつの情報を日本語、英語、中国語、韓国語など複数の言語で表示するサイネージです。同じ内容を各言語で10秒ずつ表示したりします。外国人の多い商業施設や観光地、外国人従業員の多い企業内のサイネージとして需要があります。当社では、このようなマルチリンガル表示の受注も徐々に増えてきています。
  また、私が特に注目している地域は京都です。京都では大規模な商業施設ばかりではなく、街中の小さなレストランなどでも、外国人に利用してもらうために多言語でメニューやサービスを紹介するニーズがあり、積極的にサイネージの導入を考える経営者が多いようです。
  マルチリンガルで商品やサービスを紹介するには、チラシなどの印刷物よりもサイネージが適していると思います。当社で翻訳まで含めて受注する場合、翻訳は外部に委託しますが、それ以外の表示の切り替えなどは難しいことではありません。
─ここまでにご説明いただいた用途のサイネージには、もともとは広告・販促用途でサイネージを展開しようとしていた企業も参入しているのですか?
  いえ、そういった企業はあまり入ってきていないようです。例外的にフロントランナーP社さんだけはどこへ行っても強いのですけど、当社も負けてはいません。
  デジタルサイネージという概念が広がりはじめた2007〜2008年頃は、本当にサイネージにしなければいけない部分を掴めていませんでした。当初は広告・販促用途で広がっていくように思われていましたが、コンテンツ制作にかかる費用や手間、LAN工事の費用などを考えると、「紙のポスターで十分だよ」となってしまうケースが多いのです。
  重要なのは、サイネージでやるべきことと、アナログでやることを使い分けて提案していくことです。
【取材協力】
株式会社パフォーマ
プロダクション・スーパーバイザー:岩田 敬 氏
東京都新宿区三栄町25 ボナフラワービル3F
http://www.performa.co.jp/



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