この原稿依頼の電話が入った時、普段組合に対して何も協力していない自分でしたので、お断りする理由もなく“せめて頼まれごとだけでもお受けして協力しよう”とOK をいたしました。その後、さて何を書こうかと迷ってしまったのが正直なところです。
現在の場所で営業して16 年になりますが、引越した当時、お得意先の社長様の一言で、今でも続けていることがあります。
その社長様は、自分にとっては「人」、「物」、「金」について色々な事を教えてくださった人生の師とも仰げる人です。当時、新車デーラーの会社を経営なさっていました。業者だからと、分け隔てすることもなく、謙虚な話し方の中に迫力があり、常にオーラを放っていて、お会いする時はそれはそれは緊張の連続でした。
引越しをしてすぐに、当社にお寄りくださった時のことです。社長様曰く、「会社の中にグリーンを入れたらどうかな。どこに置いても、どこに植えても構わないのでワンポイントの配置を考えてみたら」とのことでした。
グリーンの存在は、人様のメンタルな部分において、心を落ち着かせる効果があるものだと説明をして下さいました。そういえば社長様の経営している全店舗には手間暇のかかるグリーンがあちこちに配置されているのは百も承知しておりました。ですから、このアドバイスには素直な気持ちで聞き入れることが出来たのです。そして自分の会社も言われた通り、真似をしてみようと思いました。手始めに道路からの進入口に小さなケヤキの木を植え、その周りには春に花咲く低木を植えました。駐車場や、事務所の中に数個のグリーンを配置いたしました。
年数が経つにつれてそれらは大きく育ち、周りの環境に溶け込んできました。「春夏秋冬」季節で色が変わり、草取り、薬がけ、雪囲いなど会社の営業の中では、一見無駄と思われるグリーンに関わる時間も増えてきましたが、本来の煩雑な仕事の中で、何気なく育っているグリーン達を見ていると、会社や人とのコミニュケーションの緩衝剤になっているんだなあーという、その役割がわかってきました。
たった一言のヒントとも言える言葉を信じて関わってきたグリーン達ですが、当時、小さかったケヤキの木は、いつの間にか大木となりました。そして道路を往来する人や車、来社するお客様や、材料屋、運輸、自社社員など普段何気なく目に映るグリーンが少しでも、人々の心の和みになればと願っております。
現在は退職され一線を退いておられますが、時々遊びに来てくださる「人生の師」と言える当時の社長様から引越しお祝いに頂いた、水遣りのいらない、グリーンが今でも事務所の中で青々と、鎮座しております。
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