発信簿

 

安芸の宮島と「ものづくり」

  中国支部 (株)研創 岡田敏弘


  当社が本社を構える広島には、神聖なる場所が2箇所ある。1箇所は広島平和記念公園、もう1箇所は宮島(厳島)である。2箇所ともユネスコ世界遺産に登録され、毎年多くの観光客が訪れる。特に宮島は、古代から島全体が自然崇拝の対象であり、海上交通の要衝としても栄えてきた。その中心は、593年創建とされる厳島神社である。平清盛によって社殿が整備され、往時の権力者の庇護と、畿内に通じる航路の要衝として宮島詣でが民衆に広まり、現在に至る賑わいが形成されている。この厳島神社で代表的な建造物は、境内沖合に浮かんでいるように見える大鳥居である。高さ約16m、幅24m、主柱の周囲は約10mからなる両部鳥居で、現存するものは8代目と言われている。鳥居に掲げられる扁額は、有栖川宮家の9代目当主、戊辰戦争や西南戦争・日清戦争の指揮官を務めた有栖川熾仁(たるひと)親王の染筆である。
  さて、去る2001年、ホノルル日本人商工会議所設立100周年を記念し、姉妹提携を締結している商工会議所・県・市から、友好の証として記念品を贈呈することとなった。
  数あるアイデアの中で、広島のシンボルでもある「宮島の大鳥居(ステンレス製)」複製を、ホノルルに建立することが決定された。制作のご指名頂いた当社は、まずは「宮島の大鳥居」を詳細に観察することからはじめた。古来より伝わる「ものづくり」の息吹に触れ、丹念に設計思想や細部にわたって辿っていく。
  また、機械化が進む現代から、機械化されていなかった当時の工法や技術を想像してみる。すると、随所に工夫が施されており、先人の叡智と卓越した技術が脳裏に蘇ってくる。はたして、現代が進化しているのか、あるいは進化するが故に退化した部分があるのかよく分からなくなった。現代を生きる私共は、当然の如く組立には重機を使うなどして、試行錯誤の末に形にして制作には約1カ月を要した。そして、日本からの移民が多いホノルル市モイリイリ地区に、この「広島・ホノルル友好鳥居」(Hiroshima to Honolulu Friendship Torii ステンレス製 高さ8m、幅11mと実物の二分の一サイズ)は建立されている。この友好鳥居には、日米友好は勿論のこと、日本文化と現代に受け継がれている「ものづくり」の魂が込められている。


  宮島(厳島)を訪れるたびに、「神に斉(いつ)く(=仕える)島」が醸し出す厳かな雰囲気と、日本人が培ってきた歴史を思うと、自ずと敬虔な気持ちにさせられる。
  そして、科学技術が飛躍的に進歩した現代においても、歴史的建造物を通して先人の「ものづくり」の魂に触れた時、私たちはその叡智に対して素直に謙虚にならざるを得ない。さらに、自然との調和を大切にした先人のDNAが、現代の私たちにも引き継がれていることを思うと、胸が熱くなるのを感じている。


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