日本人は葬儀や法事のときなど年に何度となくお経を聞く。でも、そのお経がどんな意味なのか理解している人はほとんどいないのではなかろうか。読経の最後にとなえられる「紅顔の美少年、明日には白骨となりて」と言うのはなんとか理解できても、そのほかのはさっぱり分らない。そもそも、何と言うお経のどの部分を詠んでいるのかもわからない。
　日本の古典には原文と現代語訳が併記されたものが出ているが、お経にも同様のものが出ているのだろうか。書店で調べてみたが見当たらない。日本人の大部分がわからないお経をただ「ありがたや、ありがたや」と聞かされるというのは考えてみるとまか不思議と言うしかない。
　キリスト教の場合は信者の一人一人が聖書を開き、しっかり理解をしながら聴いている。イスラム教はどうなのかは知らないが、日に何度もお祈りを捧げるからには意味を理解してのことだろう。
　お経の不思議は仏教界の怠慢によるのか、日本人の無関心さによるのか。信仰が形だけのものである査証にほかならない。