今年の本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」(宮下奈都著)を読んだ。ピアノの調律師を目指す青年の物語である。感動した。
文章の一行一行が詩的で美しい。音に対する表現がこんなにも豊かでみずみずしい文章にはお目にかかったことがない。
それにもましてピアノというのはかくも奥が深く、微妙な楽器なのかと驚嘆した。明るい音、暗い音というのはわかるが、丸い音、平べったい音、とがった音、澄み切った音、にごった音と千変万化。しかも、それらの音を自由自在に調整するのが調律師の仕事だと言う。弾く人によって、部屋によって、雰囲気によって調律を変えるのが優秀な調律師とのこと。
私など生まれつき耳が悪いせいか、誰が弾いてもどこで聞いてもみんな同じに聞こえるし、指揮者も楽団も違いがわからない。その上、近年は難聴で更に聞こえにくくなるとともに会話の発音が聞き分けられなくなってきた。これは単に音を大きくしたら補えるという問題ではない。日本映画の鑑賞はてんからあきらめている。その点、字幕で理解できる洋画の方が助かる。家内は私が聴くCDの音が大きすぎるとしょっちゅう文句を言う。
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