今年、NHKの番組で「旅をする本」という番組を上映した。タイトルに惹かれて見てみた。
それは写真家星野道夫のエッセー集で「旅をする木」というタイトルが付いた文庫本だった。(文春文庫)「木」に一本横棒をつけ加えて「本」にしてあった。本の裏表紙に「この本に旅をさせてやって下さい」と書かれ、次々と譲り受けた人が名前を記していた。
本は何と10人の人に引き継がれ、14万キロ、地球3周も旅をしていた。中には荻田泰永という、北極点まで単独無補給の旅を成功させた人の名もある。この人は1グラムでも荷物を減らしたいのにわざわざこの本を携えて北極に行った。
そんなに人々を惹きつける本とはどんなことを書いてあるのだろうかと早速購入して読んでみた。それは短編を綴ったエッセー集だった。星野道夫は優れた写真家であると同時に深い思索家であり、素晴らしい文章家でもあった。巡り合った人々とのエピソードが感動的につづられていた。
この本を読みながら何度か涙を流した。ここ数年間の間に読んだ最も素晴らしい本だった。
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