屋外広告物点検技能講習 |
(公社)日本サイン協会会長 横山 巖 |
本年から、当協会は屋外広告物点検技能講習の全国での開催を開始しました。この講習の意義や、実施に至った経緯など、概要を簡単に説明します。 1.国交省のガイドライン 国交省は2016年4月に屋外広告物条例案ガイドラインを改正しました。これは、屋外広告物の落下等の事故を防止するために、実効性のある点検を義務付けることを目的としています。 全国の屋外広告物条例では、点検に関する明確な基準が定められていないため、遠目に見ただけの点検で、屋外広告物許可の更新が通っています。これでは事故を防げないので、実際に触れて内部も検査して安全を確認しようというものです。 2.点検を行う者について ガイドラインでは、点検の作業は適切な技術知識を持つ人が行わなければならないとしています。その事例として、「屋外広告士」と「業界団体が行う公益目的事業の技能講習を修了した者」が記載されました。 今後、屋外広告物条例を持っている、全国190余の、都道府県、政令市などの自治体は、ガイドラインを参考に、それぞれの条例を改正するものと見られます。 3.当協会が講習を実施するに至った経緯 全国で頻発する看板の事故を問題視した国交省は「屋外広告物安全対策委員会」を2015年春にスタートしました。当協会から3名が委員として参加、その中で点検基準作成ワーキンググループでは、私が座長を仰せつかりました。 点検基準の作成を進める過程で、誰が点検を行う事が適当であるかが議論されました。そして街並みの安全安心を確保し、国民の生命を守ることは、屋外広告業を生業とする私たち業界の社会的責任であり、点検技能講習は協会の責務であるとの認識に至りました。 4.日広連(日本屋外広告業団体連合会)との共催 公益団体である当協会が技能講習を行うためには内閣府による公益事業認定が必要です。この講習の社会的意義や公益性を考えて、当協会は日広連に技能講習の共催を申し入れました。もしも別々に異なる技能講習を行ったのでは、受講される業界の皆さんに対しても、報告を受ける行政に対しても、混乱を招くことになるでしょう。そこで公益事業として統一した基準で実施すべきと考えました。日広連では、既に「屋外広告士」という公的資格の認定事業を行っていますが、それと併行して、この技能講習を当協会との共催で実施することに合意頂きました。 5.内閣府による公益事業認定 当協会は2015年12月に内閣府に新規の公益事業の申し出をして、講習の実施内容、実施方法、収支予算、講師認定など、細部に及ぶ指導を受け、2016年9月に申請受理に至りました。その後、様々な面からの厳しい審査を経て、2017年2月7日、総理大臣による認定書を内閣府から頂きました。 6.今後について この技能講習は始まったばかりであり、回を重ねると共に、講義の質的向上、テキストの改訂、講師の増員など、様々な改善を行っていきます。会員の皆様には、既に点検の技術知識を有する方も多いと思いますが、おさらいの意味で、また今後の条例改正も見据え、ぜひ受講されますようお願い致します。
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