彼女は行く先を言わなかった。助手席に座り、進む道を簡潔に指示するだけだった。彼女はこのあたりの道筋を熟知しているようだった。この町の出身か、あるいはここに長く住んでいるか、どちらかだ。私は指示されるままプジョーを運転した。街から遠ざかるようにしばらく国道を進むと、派手なネオン・サインのついたラブホテルがあった。私は言われるままにその駐車場に入り、エンジンを切った。
「今日はここに泊まることにする」と彼女は宣言するように言った。「うちに帰ることはできないから。一緒に来て」
「でも今夜はべつのところに泊まることになっているんだ」と私は言った。「チェックインもしたし、荷物も部屋に置いてある」
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