サインとデザインのムダ話

 
「デザイン、サイン、アートと私の人生」
かっこいい看板をつくりたい!素敵なサインでこの街をもっと彩りのある景観にしたい!
そんな思いで24歳で創業。今年で31年目、エピソードを少しお話したいと思います。
石澤暁夫
デザイナー、アーティスト
(株)エーアイサイン代表
公益社団法人日本サインデザイン協会会員
石澤暁夫さん

■道の駅のサイン、担当者の一言
 道の駅アップルヒルのシンボルサインの依頼が地元の役場からありました。当時(21年前)青森県内でも早い取り組みで"道の駅"という名称も聞き慣れない言葉でした。
 かっこいいデザインを考え提案したところ役所の担当者から「石澤さんあなたもっと違う芸術的なデザインできるでしょ!」と、意外な一言。どこかにあるようなデザインでなくシンボリックにもっとアート性のあるサインをつくってほしいということでした。その時は一瞬ためらいましが、逆にとても嬉しく思いました。 何枚もスケッチをしこれだ!というデザインができ、模型もつくり提案したところ一回で快諾を得ました。このことをきっかけに私の発想はかたちにとらわれず、よりアーティスティックな方向へシフトすることになりました。役所の担当者が私の能力を開花させてくれたことは、その後の仕事を展開するにあたり大きなきっかけになりました。

■デジタル化は発想まで淡白にした
 残念な事にインクジェットプリンタが普及し始めた15年ほど前から、看板はグラフィックで平面をより立体的に表現できるため、実際のつくりは平面が多くなり、アルミ複合板の材料が出てからは一段と軽く薄くなりました。デジタル化はコストが下がるため革新的に発展していきますが、デザインの発想まで貧相になったような気がします。安く良くのクライアントの要望に応えるうち、表現は悪いがチープな看板が増え、味のあるものは少なく、残念ながらというか悲しいというか、簡単なつくりになり誰でも看板屋ができる時代になりました。

■いつかまたアナログの時代が到来する
 留まることのないテクノロジー、今やAIが駆使される高度なデジタル社会。だからこそ、手仕事であるアナログにこだわりたいと思っています。手描きやイラスト、またエージング処理加工ができる腕利きな職人を揃え、数は減ったもののシャッター描きや壁面のイラスト描きも行なっています。さらにはネオンの設備もまだ健在です。LEDが普及した今日、クールに光る光源ではなく、ジージーと放電しながら温かく発光するネオン管がいずれまた脚光を浴びる日がくるのではないかと思っています。あのなんとも言えずノスタルジックに輝くネオン管の雰囲気は心に安らぎを与えてくれます。

■巨大マグロ FRP造形、自信のあるフリ
 津軽海峡フェリー様からマグロのモニュメントの依頼を受けました。見積りも通りいざ発注というとき、担当者の方が「本当にエーアイサインさんで本物そっくりのリアルな造形ができますか?」と念を押され訊かれました。
 何度も言われるので、一瞬私もひるみ思わず"初めてのことなので正直自信ありません"と言いそうになりましたが、「大丈夫出来ます!」と少しハッタリ状態で返事をし、自信のあるフリをしました。いつも食べるマグロですが真近で見たことがないので、朝4時に魚市場にいき見せてもらい丁寧に観察し、それを参考にしながら作りました。製作の途中担当者の方が何度も視察、確認に訪れ、最後はとても喜んでくれ製作スタッフと喜びと達成感を分かち合いました。

■なんと渋谷のど真ん中にモニュメント!
 バスケットボールストリート1周年記念の立体作品の依頼。「そちらでモニュメントできますか?」標準語の女性の声。「はい、出来ます!」
 渋谷のセンター街に加盟している広告代理店からの一本の電話。「どうして弊社に?」の問いに「ホームページを見ました」と言う。まさしく垣根のないグローバルの波を実感しました。
 半信半疑ながら見積りを提出しその後一週間おきに「どうなってますか?」のしつこい電話の後、一方的なデザイン提案をし、2カ月後プレゼンに持ち込みついに「御社に決めます」の返事を頂きました。奇跡的に大都会にモニュメント設置が現実のものとなりました。
 渋谷区長、センター街理事長、関係者の方々と選手、チアガールがパレードし除幕式をするという盛大なセレモニーが開かれ、私は感無量の喜びを味わいました。TVの中継等で必ず出てくるあのスクランブル交差点を渡りきった賑やかな場所に“諦めなかった証”、いや“しつこかった証”がステンレスの光沢を放ち凛と立っています。

■絵画と立体作品のアート展開催、アートを身近に感じてもらいたい
 若い時から絵を描いてきました。水彩、油絵の風景画。最近は石膏、アクリルを駆使して抽象画も描き、立体作品も飾り3年に一度くらいの頻度で展覧会を開催しています。様々なジャンルの作品を飾り、感性に触れる機会に来場者にとても喜んでいただいています。仕事とは違い自由に描け、何にも誰にも縛られず出来上がった作品は格別なものがあります。
 サインの目的は思いを伝え情報を伝達すること。機能性の中にアート性を組み込み、よりアーティスティックなサインをつくり街を豊かに彩りたい。これからもそんな創業時の思いを大切にデザイナー、アーティストとして生きていきたいと思っています。
 私の夢はニューヨークにリンゴのモニュメントを飾ることです。



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