点滅希

 
 再考「日本の夏」 
    

 暑いのは得意。暑さを苦にしたことなどない。夏は暑いのが当たり前。暑い夏だからこそビールもうまいのだ……などと、ついこの前まで吠えていた。
 しかし、そうも言っていられなくなった。あまり暑すぎるのも問題なのであると言い訳しながら、エアコンの威力に身をゆだねる「日本の夏」になっていく。
 ずっと温帯気候の日本で生きてきた身だから、熱帯の環境で生きていくのはむずかしいのは間違いない。
 かつて、動物園開設に関わっていた頃、大阪まで爬虫類の展示施設を視察に行ったことがあった。そこで、厚めのガラス板に両手(前足)を押し付け、悲痛の表情の(ように見えた)オオトカゲとまともに対面した。そして、しばらく彼(勝手にオスにする)の様子を見ていると、彼が必死になって「オレをここから出してくれ…」と訴えているようにも見えてきた。 
 故郷がどこなのか知らないが、体を執拗にくねらせ動く姿はどこか切なく哀れでもあった。いかに空調が調整されていようと、オオトカゲが心地よく生きていく世界でないことは明白だった。
 いきなりだが、今、エアコンに癒されていることを思うと、暑いからエアコン、命の安全のため、生きていくためにエアコン……だ。何となく虚しい。エアコンがあるから夏を凌げるというだけでは、ちょっとさびしすぎる。甲子園も相変わらず痛快だったではないか。「日本の夏」を再び考える必要があるのかもしれないと、大袈裟だが思ってしまうのである……。

(N.コト)

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