点滅希

 
 「自分の言葉で」 
    

 何かの企画づくりに関わっていたりすると、自分の奥底に眠っていた思いというか、考え、感覚…いやもっと複雑な何か…、とにかくそういうものが、不意に浮かび上がってくる時がある。そして、時間をおいて、自分がこれまでいろいろなモノゴトと付き合ってきたことを思ったりする。先日もある新聞広告の企画ミーティングに参加していて、自分の口から、全く用意されていなかった言葉がどんどん出ていくのを感じた。不思議な感覚に襲われ、語りながら、まるで第三者からの懐かしい言葉を聞いている別の自分がいるような気がした。しかし、当然だが、それはすべて自分の言葉だった。自分の中に眠っていたと思われる言葉だった。忘れかけていた、いや完全に忘れ去っていた言葉だったと言える。そのことでなぜか自分が救われたような気になった。言葉は口から出ていくが、やはりアタマの中で作られているのだとも思った。それまでのさまざまな経験をとおして溜めこまれたものしか、言葉になって出てこない…そんな思いを新たにしたのだ。ひとつの言葉は他の言葉と響き合い、繋がっていく。そうした上で文章も会話も成り立っていく。言葉が繋がることによって、あらゆるモノゴトが広がり深まる。こうして拙い文章を綴っていながらも、とにかく言葉によって何かを伝えようとしている小さな努力に、それなりの楽しさもあるのだ。伝えたい何かを言葉にするというのは簡単ではない。だからこそ…やはり言葉になって出ていく自分自身の磨き方に、もっと気持ちを込めなければならないと思う……。

(N.コト)

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