街の魅力を再認識し誇りと愛着を育み発信する |
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最近、多くの都市で地域活性化としての「シビックプライド」活動が盛んです。市民が我が街の魅力を再認識し誇りや愛着を醸成するコミュニケーション手段として、第三者にコミュニケートするのです。その発端は、ニューヨーク州商務局が1960年代後半から70年半ば、強盗や暴動などで財政破綻に直面した状況を打開するために考えた財政立て直しによる観光キャンペーンです。ここでつくられた「I♥️NY」のロゴは様々なものに展開されニューヨークの土産物の定番になり、「アイラブニューヨーク」のテーマソングや「I♥️NY」ロゴの入ったグッズの展開は大成功し、見事に立て直しが図られました。 オランダのアムステルダムではシビックプライドを体現した「I amsterdam」があります。「I amsterdam」は2003年にアムステルダム市が行った都市フロモーションのキャッチコピーです。「アムステルダムの資産は人」という理念のもと、「I amsterdam」の立体文字が国立近代美術館やスキポール空港などに設置され、観光客の撮影スポットとなったり、市民を撮影したフォトブックの出版、ロゴ入りグッズの販売等、「I amsterdam」の展開活動が行われ、アムステルダムに住む人、来る人、関わる全ての人がアムステルダムを表現する存在であるというメッセージで、市民の心の中に、アムステルダムに対する愛着や誇りが呼び起こされました。
日本では富山市がLRT事業と関連した様々な街の魅力の発見とコミュニケーション活動があります。富山のLRT事業は、北陸新幹線の建設に伴う富山駅周辺の連続立体交差事業に関連して、利用者及び列車本数の減少傾向にある旧富山港線を、市街地の様々な課題に対する富山市のまちづくり目標「公共交通によるコンパクトな街づくり」を進める有効な方法として、2003年5月市長が路面電車化を発表、新しいまちづくりの起爆剤とする「富山ライトレールのトータルデザイン」をスタートしました。その目的は富山の自然、食材、歴史、地場産業などの地域資産を生かしながら、都市的課題を解決し、「公共交通によるコンパクトなまちづくり」を実現させるための牽引力とすることです。その路線コンセプトは「TOYAMA CREATIVE LINE(街づくりと連携し、富山の新しい生活価値を創造する)」とし、車依存の社会から脱却し、高齢化社会に対応した楽しく歩ける住みよい街づくりの実現、富山港線を活用した地域情報の発信、地域資産の活用による新しい生活価値や風景の創造。質の高いデザインにより市民が世界に向けて誇れる路線環境づくりを目指しました。 その一つは地域資産の再発見と広報で、ライトレール駅舎に対する「個性化壁」計画です。各電停の個性化壁には、周辺の地域特性に関連する要素を抽出、地元のデザイナーによってデザインされたものを地元企業が協賛し各駅に設置しました。この方法は地域情報の発信と駅空間の個性化、沿線の楽しさ、そして企業参加による新しい広告形態、環境形成手法として試みられたのです。
その他LRTに対するラッピング計画では、第三セクターである富山ライトレール株式会社が車両に対する広告のラッピングを禁止し、富山市に関する祭などのイベント、まちづくりに関する関連事業、社会的テーマの広報、季節の演出などに限定し市民への広報と新しい環境作りを行いました。
もう一つは「AMAZING TOYAMA」計画です。「AMAIZING」の意味は「驚くほど見事な様子」と言うことで「AMAZING TOYAMA」のフレームや市民一人ひとりのメッセージポスターが市民や来街者に、富山の魅力に関する気づきのきっかけを与えてくれるのです。
これはTOYAMAの認知度やイメージを高めるためのシティプロモーションであり富山の魅力に気づき、発信することにより市民一人一人が一層我が街に対して愛着と誇りを抱く「シビックプライド」を育むことが目的です。これらの活動により街に住む人、来る人、関わる全ての人々が街の魅力を再認識し理解することにより富山という地域に対しての愛着と誇りが醸成されます。そしてその状況が富山を訪れた多くの人々の目に触れ富山の「街の魅力」が伝達されるのです。 |