先日、長年お付き合いのあるお寺の住職から「先代の住職の時に納めてもらった黒塗りの金看板(木製)をまたお願いしたいのだが」と連絡がありました。今では金箔を貼れる職人さんが身近にいないこともあり、お断りするつもりでお寺に伺いましたが「何とか」と懇願され当時(昭和の中頃)のものを見本にと渡され帰ってきてしまいました。
それから各工程ごとに見直しを始め仕様等の変更によりお引き受けすることとなりました。木材はカツラからカバへ。彫刻文字はデータ化により手彫りからNCルーターで。塗装はカシュー塗装からウレタン塗装に。金箔文字は金色シート文字へと変更し「令和」版を納めることが出来ました。
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印半纏姿の貴重な1枚。左端の1931は年号でしょうか? |
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写真の印半纏は当社の戦前の頃(時期不明)のものだと思いますが、この印半纏をまとった職人さん達が黙々と文字を彫り、色を塗り、金箔を貼る作業をしていたことでしょう。同じようにネオンにおいてもネオン管をバーナーで炙り、管を曲げ、ガスを入れる。サポーターを立てバインド線で取り付けていく等々、ネオンの作業も今では少なくなってしまいました。ただ、どちらの作業も人間味溢れる「ものづくり」だったと思います。
人工知能AIが人間の知能を超える転換点、シンギュラリティが2045年と予測されています。「ものづくり」はさらに進化し、全く人間の手のかからない時代がやってくるのかもしれません。でも「ものづくり」への人間らしさや思いがどこかにあってほしいと思うのは私だけでしょうか。
当社は岡山県出身の祖父が東京の看板店での修業後、大正15年に旭川で看板店を創業しました。平成4年により良い「ものづくり」をコンセプトに「本業回帰」(Return to Basic)よりアールビーを取り入れた社名変更を行い現在に至っています。
本年、日本チームの快進撃でラグビーワールドカップが盛り上がりましたが、ラグビー選手が愚直に前に進むように創業から90年あまり、印半纏に込められた「ものづくり」への「愚直さ」が事業を継いで来たのではないかと思っています。 |