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お茶問屋・許斐本家(このみ) |
![]() 歴史的な町並みにある建築物は、多くが妻入りの町家形式だが、許斐本家は数少ない平入りの町家である。これ自体も地域にとっては1つのサインになり得るが、19世紀中頃に建てられたと推定される店舗の軒上には、古い木製の看板が載る。話では、明治後期〜大正初期とも言われるが、はっきりとしたことはわかっていない。電話番号は20番。資料によれば、許斐久吉の20番は、大正3年には電話番号が付与されている。私の知る知識では、当時は導入された順であったと聞く。少なくとも昭和初期の古写真には、この看板が写る。木製看板は、戦後特に急速に減少していくが、18世紀前半にはあったとされる伝統的なサインのひとつでもある。許斐本家には、「日除け」というお茶屋特有の設備もあるが、これについては稿を改めることにしよう。 許斐本家は、多くの農家のお茶を受け入れ、それを精製し、多くの業者がまとめ買いをしに来ていたという。この看板は、入口上で、その人々と、行き交う人々を見つめてきた。当時は、数多くある木製看板の一つにすぎなかったかもしれないが、今はむしろ数少ない老舗のサインとして町を見つめている。 |