点滅希

 
 「生きもの」 
    

 これが読まれている頃には、大騒ぎも落ち着いてくれていればいいのだが、とにかく忌まわしいウィルスにペースを狂わされている。いや、ペースなんてものではなく、もっと言えばニンゲンらしさみたいなものまでが試されているようで気分はよくない。今回のことで、自分が「ヒト」という、地球に生きる生物の一種であったのだということを認識させられた。これはある意味新鮮なことではあったが、また別な意味で、自分の命の小ささというか、いつ消えてもおかしくないものなんだという認識に繋がった。
 群れを成して生きる動物たちのように、ニンゲンも群れを成して生きている。いくら都会は孤独だと言いながら、ああして群れを作り、その群れの中に自分を置いて生きている都会人の認識とは何なのだろうと、余計なお世話ながら考えていた。ライオンは、群れを成しているシマウマなどを襲う。水鳥を狙う猛禽類なども、何百もの群れの中に突っ込んでいき、その中から一羽だけを追い続け獲物にする。こうした群れを成す動物たちの行動が、今回の騒動とどこかで結び付いているように思えて仕方なかった。自分が狙われているということに、群れの中の獲物は気が付かない。
 しかし、群れをなしているということは繋がっているということでもある。今回、感染という言葉から学んだこととして、生命は繋がっていたんだということがある。本来、この言葉から連想したくはなかったが、生きものとして自覚する上では貴重だった。だから、群れを成していながらも、生命は守れる。それがニンゲン、いや人間なのだろうと思う。

(N.コト)

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