「あたし、いいこと考えついた。
百合枝のからだがもとに戻ったら、
今年でも来年でもいいわ、
直子も誘って四人でヨーロッパ旅行をしましょうよ。
せっかく英米文学学科を出たんだもの、
まず振り出しはイギリス」
はしゃいでそう煽る京子に藍がすかさず応じた。
「それはけっこうだけど、
あなた会話のほうは大丈夫?
忘れていない?」
そこで大笑いになった。
喫茶店の窓ごしに、
暮色が分刻みで深まってゆく大通りのにぎわいが眺められた。
まだ五時前だというのに、
ネオンやイルミネーションが次第に色と輝きをまし、
早くも夜の響宴のはじまりを告げている。
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