河北新報 |
■ 夜空彩るアートな輝き ■ | |
「ここまでくるとネオンは看板というよりアートでしょう」。仙台市青葉区の繁華街、東二番丁通と中央通の交差点。見上げた先には、青く輝く円筒形のネオンがそびえている。 光の束が波のように右から左、左から右へ。消えた瞬間、中心部で放射状に白い線が光り始め、奥に仕掛けられた緑の渦巻き模様が浮き上がる。企業名は隅にさりげなく「OLYMPUS」。一分単位の規則的な光のショーが延々続いた。 「高さ十八メートル、幅七メートル。使ったネオン管は二千本以上にもなる」。案内役の柿沼弘さん(61)が、解説してくれた。太白区のネオン製造会社「東北電照」社長。全国ネオン協会の東北支部長を務めている。 オリンパス光学工業の看板は、仙台の同業者が手掛けたという。平成八年度の宮城県の屋外広告物コンクールで、ネオン看板から唯一優秀賞に選ばれた業界自慢の「作品」だ。 「ただ光っているように見えて、複雑なんです。じっくり見れば、ネオンはそれぞれ味があります」。柿沼さんの言葉を聞き、あらためて目をビル屋上へ。万華鏡か、花火かー。立ち止まって数分。夜空に映える「アート」が実感できた。 <空にしたガラス管にネオンガスやアルゴンガスを注入し、一万五千ボルトの高圧電流を流すと、美しい光を発する。ガスの種類と着色ネオン管の組み合わせで約三十色作れる> イロハを教わりながら、JR仙台駅方面へ。「あの流れるような文字のラインを見てください」。柿沼さんが「コカ・コーラ」の看板を指さした。「業者がネオンを見るポイントは曲線です。あれが難しい」 ガラス管の直径は一センチ前後。角の曲がりは部分的に熱すれば済むが、曲線は管全体を加熱して慎重に処理しなければならない。取り付けの際も、曲線ものは難物。折れやすいという。 「最近は集積回路(IC)制御で、速い光の点滅や複雑な動きを表現できるようになった。でも、ネオン管の加工だけは、今も手作業。ガスバーナーで熱して曲げて、くっつけて。昔と何も変わらない」と柿沼さん。この道四十六年。技術の世界で生きてきた「職人」の自負がにじむ。 「管がどのように走っているか。皆さん細かくこだわって見ると、街歩きはもっと楽しいですよ」。全く同感。作り手の視線で見るネオンの世界は想像以上に奥深い。 |
||
■ 信条は「景観と仲良く」 ■ | ||
「これは五千万円。そっちは一億円しますよ」。柿沼さんは、点滅を繰り返す大型ネオンを指さして、製作費を見積もってみせた。 JR仙台駅近くでビル屋上を借りる場合、「賃料だけでも年間一千万円は下らない」という。値段を確認しながらネオンを見ると、きらめきが一層まぶしく見えてくるから不思議。 「商品や企業イメージを一瞬のうちに消費者に売り込めます。目立つネオンの費用は、ほかの広告媒体に比べれば、安い」。そこまで説明した柿沼さんはさらに一言。「でも度が過ぎれば、光害に。景観との調和が求められています」
|
||