Vol.57 |
活字メディアより |
著者・猪瀬直樹
「続・日本国の研究」
文芸春秋発行 金融の活性化は「十年間の苦しみ」を伴う ー抜粋ー |
ビッグバン反対派のビル・トッテンはコンピュータソフトを扱うアシストという会社の代表取締役である。以前、トッテンにおもしろい話を聞いたことがある。日本の市場は閉鎖的だ、とアメリカ人は批判する。だがほんとうに努力したのか、と。日本人は必死になって努力してアメリカ市場へ進出した。 「アメリカ人は文句ばかり言う。だからわざとホテルオークラから見えるところにわが社のネオン広告を出した。アシストを英語ではなくローマ字で。ここは日本なんだ、とね」 70パーセントのアメリカの家庭は2千ドル以下の株しか持っていない。逆に25パーセントの家庭が株の80パーセントを所有している。だから株価が上がっても一般の家庭にはたいした恩恵がない。「ビッグバンをやったアメリカやイギリスは、貧富の差が大きくなった」と言うトッテンは、日本贔屓すぎるところもある。 |