ほっとコーナー

 リポート 広告塔の償却年数
理事 小野博之

 今年の1月、新聞各紙にこんな記事が載っていたのをご記憶の方も多いだろう。紳士服業界トップの『洋服の青山』が広告塔の申告漏れで多額の修正申告に応じたというものである。

 同社は全国に500支店を持っており、屋上に「洋服の青山」と表示したかなりの規模の広告塔を設置していて目を引く。この広告塔を建物に付属する設備として15年の耐用年数で減価償却していたところ、塔が土台から重量鉄骨造となっており、広島国税局では「構造上、建物本体と一体」として40年の耐用年数で償却するよう指摘、この差によって発生した償却の超過額分を申告漏れと認定した。このため同社では過去3年間にわたる差額分と過少申告加算税を合わせた3億9千万円を追徴課税されたという。

 金額の多さもさることながら、対象が広告塔であるからには関心を持たざるを得ない。「われわれは造るだけ、帳簿上の処理については施主さんの仕事であるから関知するところではない」とはいっても、ことは構造上の取り合いが関連している。償却年数を15年でみるか40年でみるかは施主にとっては大きな問題で、そのことで施主から相談を受けないとも限らない。また、取り合い上建物とは切り離して施工しているつもりでも、税務署の判断では一体と見なされたのでは業者の責任問題ともなりかねない。

 この件は全ネ協の理事会でも話題になった。関東ネオン業協同組合では梅根専務理事が所轄の税務署に、またその後高村副理事長が国税庁にそれぞれ問い合わせに出向いた。  その回答によれば、広告塔については構築物となるものであれば法人税法の耐用年数省令別表の「広告用のもの」に該当し、「金属造りのもの」であれば20年、「その他のもの」であれば10年となる。

 また、ついでながら広告塔に取り付けたネオンサインは、広告塔とは区別し、同表の「器具及び設備」の5「看板及び広告器具」のネオンサインに該当し耐用年数3年となる。  そこで、当該の広告塔が「建物」となるか、「構築物」となるかが問題となるが、「構造的に見て広告塔の主要部分が建物本体と一体と認められれば『建物』となり、建物の上に乗っていると認められれば『構築物』となる」という以外具体的な解釈は得られなかった模様である。ごく素直に解釈すれば、建物と広告塔がアンカーボルト取り合いになっているかどうかが判断の分れ目になるのではなかろうか。

 ではどうして「青山」が、広告塔の柱をボルト取り合いにしないで本体柱と一体にしたのだろうか。考えられることは、一体にして建物本体と同時に建ち上げればコストの軽減が計れるからではなかろうか。もう一つの可能性としては、低層の建物では大きな広告塔を乗せた場合建物高さの3分の2をオーバーしてしまうので、あらかじめ広告塔を建物として確認申請をしたケースである。

 実際のところは関係者に聞くしかないが、同様のケースでトラブルに巻き込まれないように業者としては十分注意したい。

 「青山」の記事についてもう一つ分からないのが、当初「建物に付属する設備として15年の耐用年数で減価償却していた」との記述である。この15年という期間は耐用年数省令の別表にはどこにも出てこないのだ。ちなみに同表から看板に関連する項目を拾い出してみると、建築付属設備の項で例示される設備項目に該当しないものに関して、「主として金属製のものを18年」としている。これは袖看板等に適用されるようだ。また、器具及び備品の5として「看板及び広告器具」欄に「主として金属製のものは10年、その他のものは5年」と規定している。具体的にどんなサインがどの項目に該当するかは税務署員の見解によっても違ってくるだろうから、慎重に臨む必要がありそうだ。文末にそれ等関連項目を抜粋して表にしてみたので参照されたい。

 蛇足ながら、更に不思議なのは減価償却資産の耐用年数表には建物の構造、用途別の耐用年数が多岐にわたって示されているが、記事にある40年という数字がどこにも出てこない。税法はつくづく不可解だ。

機械及装置以外の有形滅価償却資産の耐用年数表(抜粋)
種  類  構造または用途 細  目 耐用年数
建物付属設備 前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの 主として金属製のもの
その他のもの
18
10
構 築 物 広告用のもの 金属造りのもの
その他のもの
20
10
器具及び備品 5. 看板及び広告器具 看板、ネオンサイン及び気球マネキン人形及び模型
その他のもの
主として金属製のもの
その他のもの
3
2
10
5

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