ロシア支援セミナー 研修生の見た日本のサイン

 ネオンサイン 光の躍動感と仕上がりの高さに感嘆
屋外広告製作会社社長 メリニク・ドミトーリ・ウラジーミロビッチ
(ウラジオストク)

メリニク・ドミトーリ・ウラジミロビッチ まず最初に、講義や屋外広告製造工場見学の過程で多くを学べたことについて日本側に感謝したい。圧縮空気による、すなわち型を用いたプレスによる看板製造を行う工場の訪問は非常に興味深く、組織的な仕事ぶりや、スムーズな生産工程には好感が持てた。

 ネオンサイン製造企業の見学も興味深く、ネオン管の電極製造工程の自動化、またある企業での看板とその部材製造の過程は特に印象に残った。一つだけ意外だったのが図面の作成方法で、ここでは定規、紙、鉛筆という昔ながらの手法が用いられていた。こうしたこと全てのためには多くの時間を必要とし、図面類の保管に手間取り、一人か二人ですむはずの製図工を数人動員しなければならなくなる。コンピュータを使えば全てが簡素化できるだろう。(注1)

a) データベースによる保管
b) 大きな図面の出力にプロッタを使用
c) 社内スペースの有効利用
d) 人員の削減

 しかしこれは唯一のネガティブな点であり、その他全ての見聞からは大きな賛嘆の念が生まれた。

 屋外広告に関して言えば、銀座や秋葉原でのネオンサインの大きさには驚くと同時に感心し、その光の躍動感や仕上げの質の高さについてはただ感嘆の念を覚えるのみであった。しかし、これら全ての多様性と美しさの陰にひとつ小さなマイナスがあるように思う。それは、いくつかの場所では大きな広告看板が多すぎて、周囲の環境や街の景観を圧迫するような感じがあり、あたり一面が広告の壁で覆われていて視線をどこに落ち着ければいいのかわからなくなってしまうという点である。そしてそれら全てが点滅し、瞬き、動き回るので目がチカチカし、頭が混乱してしまう。街が何から成り立っているのかがわからなくなってしまう。広告(すなわちサイン)と周囲のどちらが大切なのか?おそらくこれは広告スポンサー各々が他社に秀で、より大きくなり、スケールで圧倒しようと努めた結果なのだろう。ここから競争が、出口のない循環が生じる。

 しかしこうした意見は、こうしたものに不慣れな、たとえば無人島から都会へ出てきたような人間が抱くものなのかもしれない。

 ライトボックスのような構造物もあまりよい眺めとはいえない。形がどれも一様で(縦長の長方形)で、色とそこに書かれた内容にしか違いがない。

 ショーウィンドウ その数、見事な出来映え、アイデアの深さ、ひとつとして他と似ているショーウィンドウがないという多様性に驚かされた。ショーウィンドウを絵画として見ることもできる。色彩の戯れ、空間、立体的な展示物が生む奥行き。様式感があり、押しつけがましくなく、同時に心地よく、軽やかで、声高には叫ばない印象。この分野の巨匠である八鳥治久氏の手がけたショーウィンドウは特に記憶に残った。

 立体広告(「屋外家具」) − 形の多様性、ライトアップ、使用されている素材の多様性、特に天然素材(石、木)との組み合わせ。プラズマやレーザー等の技法により表面にあらゆる質感が与えられている。周囲との調和を図る構成上のアイデアも興味深かった(広場、公園等)。大阪の動く立体広告看板(常に動いているカニ)。

 全体として、日本の屋外広告について得た知見は、ウラジオストクで私が今後広告事業を行う上で役に立つと思う。広告制作の手法、アイデアの具体化作業、技術的解決の実例を自分の目で確かめ、ウラジオストクでの活動に応用するための必要な知識を大量に持ち帰ることができる。

(注1)この部分の記述については朝日電装(株)塚脇社長より以下のコメントがありました。
 ネオン原寸原稿の作成に関して、あたかもコンピュータを使用せず旧式な装置と入力で作業をしているように書かれていますが、コンピュータによる原寸図作成は、協力会社に依頼しているとの説明が十分に理解されず、見学行程の中で職人による原寸原稿の制作方法をお見せしたために誤解を招く結果となったようです。

 企業訪問に 強い印象を受ける 
屋外広告製作会社社長 ムフディノフ・ラディク・ファリドビッチ (カザン)

ムフディノフ・ラディク・ファリドビッチ まず最初に「ロ東貿」及び全日本ネオン協会に対して、我々ロシアの企業家に屋外広告に携わる企業の活動の主要な傾向を知る機会を与えてくださったことに感謝の意を表したい。

 セミナー初日から全ての講義が非常に内容に富み、多くの興味深い情報を含むものであった。特に金子武義氏、八鳥治久氏の講義はその独創性と新機軸で際立っていたことを指摘したい。田口敦子女史の講義では多くの映像資料が用いられた。専門分野における知識のほかにも、全講義を通じて日本人の考え方の本質や仕事に対する態度をより詳しく知ることができた。

 屋外広告に携わる企業の訪問は特に強い印象を残した。我々はどのように、またいかなる原則に基づいてビジネスを行えばよいのか、生産工程をどのように組織すべきか、従業員をどのように指導すべきかを見ることができた。

 設備、技術、材料のいくつかはロシアでは使われていないもので、その点では今回の経験を我が国で応用することが可能である。 「昭和化成」、「トーシン」、「朝日電装」等の企業訪問は大変興味深かった。

 セミナー参加者は、屋外広告の製造と設置の理論と実際を知るだけではなく、深く歴史に根差した日本人の文化と伝統に親しむ貴重な機会を得ることができた。

 この観点からすると、広告と環境、建築物を調和させるプログラムは非常に大きな意義を持つといえる。

 屋外広告に携わる企業の業務においては多くの美点と共に、いくつかの疑問点もあった。ネオンサインの原寸図作成工程では専用のソフトウェアが用いられておらず、そのために膨大な資料を紙で保存することになっている。図面の作成にもしばしば旧式な装置が使用されていた。

注2)注1と同様  しかし、こうした指摘は部分的なもので、研修全体の良い印象を損なうものではない。 最後に、非常に的確かつ賢明な研修プログラムを準備して下さったオーガナイザー諸氏の功績を指摘しておきたい。

 屋外広告企業の活動を学べたことにもう一度感謝の意を表したい。

 
 充実の2週間 百聞は一見に如かず(ロシアの諺) 
シャイデンコ・ワジム・ゲンナージェビッチ 屋外広告会社社長 (ウラジオストク)

シャイデンコ・ワジム・ゲンナージェビッチ ロシアの企業家を対象に、日本側が主催する屋外広告に関するセミナーの第二部(第一部はウラジオストクで二月に実施された)が終了した。ロシアで広告業に携わる専門家グループの日出る国での二週間の滞在を振り返り、総括してみよう。

 「ロ東貿」の中小企業支援センターのおかげで、我々はこれまでビデオや書物を通してしか知らなかった世界に名だたる広告物を自分の目で確かめ、それらを生産する企業を訪問し、経営者の方々と話し合い、共通の問題について議論し、日本の文化、各地の名所を間近に知る機会を得ることができた。

 日本での二週間は非常に充実した有益なものであった。数々の講義と様々な都市での企業訪問に満ちたプログラムにより、我々は芸術、科学、建設、電子工学、マーケティングなどの人間の多様な営みが交錯する世界にひたることができた。この間に得られ、また生まれた知識、印象、情報、アイデアは疑いなく今後の我々の活動の助けとなり、新たな仕事を生む源泉となり、問題解決に役立つことであろう。

 秋葉原の巨大なネオンサイン、銀座のフルカラーLED画面、大阪での立体的な看板、神戸でのライトアップされた素晴らしい建築物は我々の記憶に長く留まり、また写真やコンピュータに永久に残り続けることだろう。

セミナー日程表
10月 9日(月) 「開講式及びオリエンテーション」
講義「日本における中小企業経営のポイント」
講師:日本ベルパーツ(株)社長 西畑三樹男氏/「電飾看板・屋外広告製造業・施工業の経営」
講師:(社)全日本ネオン協会会長 廣邊裕二氏

10月10日(火) 講義「中小企業開業のポイント」
講師:日本コーディネートセンター金子武義氏/「中小企業製造業のマーケティングとビジネスプラン」
講師:同上
10月11日(水) 企業視察「屋外広告物製造・施工企業」/「屋上ネオン広告現場視察」(新宿、原宿、渋谷、銀座)/「夜のネオン看板掲出現場視察」(銀座、新宿、渋谷)
10月12日(木) 講義「町美観とウィンドウディスプレイ」講師:八鳥治久デザイン事務所長 八鳥浩久氏/「野外広告の効果とデザイン」講師:多摩美術大学教授 田口敦子氏
10月13日(金) 企業視察 昭和化成(株)(羽村市)/トーシン(株)(世田谷区)
10月14日(土) 市場視察「ビーナスポートショッピングモール」(複合店舗施設)
10月16日(月) 企業視察 朝日電装(株)(豊中市)/赤見電気(株)(尼崎市)
10月17日(火) 企業視察 (株)三陽電機製作所(岐阜市)
10月18日(水) 講義「ネオンサインの設計」
講師:(株)ウララネオン社長 板野遵三郎氏/「ネオンサインの製作と施工」
講師:フカキネオン看板(株)社長 須江吉助氏
10月19日(木) 演習「ビジネスプランの作成演習」
講師:日本コーディネートセンター 金子武義氏
10月20日(金) 「ビジネスプランの作成演習」
「ビジネスプラン、グループ別発表」
講師:日本コーディネートセンター 金子武義氏
 

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