「あなたの本職は」と聞かれたら、躊躇することなく「カンバン屋」と答える。「そうなんですか」とは言うもののラフ過ぎて想像しにくいらしい。それを感じるとすぐ補足する。
「ネオン塔や光る看板その他、塗って文字を描くものは全て私どもの仕事です」「その中でも、あなた自身が得意とするものは何ですか」
さて、何と答えるべきか戸惑う。普通なら免許を持っているものになる。数ある内、どれを言えば会話が弾むか即断することになる。元来、「本職」とは、その道に熟練した者、という意味もある。「電気」ではちっとも面白くない。その他はみんな中途半端な私。「誰にも負けないないこと・・・あります。寝付きが早いことです。場所を選ばずその気になれば二分とかかりません」「わたしもだ。それでお互いに元気・・・?」
本職の話が寝付きの話で決着。熟年者同士は何故かこうなる。まあいいか。
|